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八話、美食

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 喧噪。騒がしさで彩られているのは、飲食店……だった。飲食店といっても何が出るのかはわからない。ファミレスとも少し違う、謎の雰囲気を持つ店だった。繁盛はしていた。

「なんだ……これ……?」

 俺は思わずつぶやいていた。本当になんなんだろうか。これは食べ物なのか?

 俺は、旅をするにはモンスターの肉くらい食べれるようにならないとな、と思った。そこでモンスターっぽいネオウルフの焼き肉定食を頼んだわけだ。それを頼んだときから周りの俺への視線が強くなった。なんだろう、勇者を見る目になった気がする。俺、そういえば勇者だな。

 とりあえず目の前にある油でギトギトして、尚且つ無駄に焦げているこの肉、それにレタス、米。それを平らげなければいけない。肉からは不穏な空気しか感じ取れない。食べ物だとは思えない。

 一口、俺は口にした。


 至福


 なんなんだろうか、言葉に形容できないような美味しさを、この肉は俺の口の中ではなっていた。俺がこの肉を食べて幸せそうにしたのを見て、ほかの客は驚愕と感嘆の感情を露わにした。

「よく、あんなものを食べれたな……」

 なんて声まで聞こえる。だが、これは、どうしようもなく旨いのだ。形容しがたいほどに旨いのだ。俺は訳が分からなくなる思いのまま、ご飯をおかずに、この肉を口に入れた、この美味しさを理解できないとは……あぁ、いきる喜びの三分の一を失っているぞ。俺はそう思った。


 冷静になってみると、何で俺は異世界に来てまでグルメ番組みたいなことを(脳内で)やっているんだろうと考えた。旨かったのが悪い。責任転嫁をした。食べ終わったので、勘定を払い、ごちそうさまと言ってから店を出る。俺に吹くのは少し寒い風。夜が来たことがわかった。


 思ったより宿屋には人がいた。たとえるなら夕食時の回転寿司のチェーン店のレジ付近くらいの人が、宿屋の入り口近くにいた。繁盛しているなーと思いながら俺はレジみたいなところに行った。

「一人部屋一つで」

 まぁ、一人だし。というか、隣に彼女連れてなくて悲しい。いるのに、彼女いるのに。

「はい、わかりました。いつからですか?」

「今日からで」

「あぁ~、すいません。今現在部屋が満室でして」

 予約の客と勘違いしたのか。というか、こんだけ人がいるんだ、部屋が空いているならもっと少ないだろう。理由? 俺にもわからん。

「あぁ、わかりました」

 俺は曖昧な返事を残し、宿屋を後にしようとした。いや、まてよ、俺はレジに戻った。

「この辺でほかの宿やってありますかね?」

 ちょっと同業者のことを聞くのは失礼だと思ったが、背に腹は代えられない。いや、背に寝床は代えられない? わかんね。とりあえず、ベッドで寝たい。それだけだ。というか、この街を壊すとベッドで寝ることができなくなり、なおかつ野宿か。悲しいな。

「はい、向こうの宿屋<シェルシェール>なんかがお勧めですよ。うちよりかなりお高くなりますが、サービスは整っています。あそこのサービスに追いつけ追い越せが、うちの目標なんですよね」

 無駄な宿屋情報を俺に与えてどうしろと? まぁ、いい、感謝はしておこう。

「ありがとう」

 俺はそれだけ言うと、宿屋をでた。次の宿屋では(かなり高かったが)部屋を借りれ、寝床の確保に成功した。こうして、俺の異世界での一日目は、幕を閉じた。

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