七話、宝石店
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宝石屋。見事な装飾に彩られていた。すげぇな。金持ちだな。と、金がない俺は当たり前のことを考える。手には先ほどよりさらに増やしたルビー。合計4つほど。なぜ4つにしたのかは……疲れたからだな。普遍的なRPGと同じように、魔法を使うと、MPが減るらしい。といっても、大型っぽい熱き隕石<ケオメテオリティス>を十分ちょい使っていても、全く疲れなかったのだから、思ったよりMPは高いのだろう。いまでも少ししか疲れていないし。俺って結構チートだな。
宝石商の店に入った。カランコロン。どこの店の鐘の音だな、と、たわいもないことを考える。
「誰だね、こんな時間に」
宝石商だと思われる、太った中年男が俺に言う。冷静に考えればもう19時くらいだった。日は落ちている。ランプの明かりだけが店を照らしていた。
「少し宝石を買い取ってもらいたくて」
俺は正直に言った。ルビーを出す。
「できれば明日にしてくれ……と言いたいところだが、こんな時間にくるんだ。余程金に困っているんだろう。少々値が下がるが、即決で宝石を買い取っても良い」
上から目線だなぁ、と俺は思う。だが、細かいことを気にしてはだめだ。俺は手に持っていた4つの宝石を、中年男に渡した。
「これか……」
なにも言わず渡したのを肯定と受け取ったのだろう。中年男は唸りながら宝石を鑑定しているようだった。
「ちょっと待ってくれよ……」
なんだろう、中年男が俺を制した。
「結構な上物らしい、魔法で鑑定するが、かまわないかね?」
魔法で鑑定できるのか。この世界は便利だな。その魔法を見れば、俺もその魔法が使える気がした。なんだろうか、俺に使えない魔法はない、そんな気がしたのだ。
「ああ、いいぜ」
俺のナルシスト的思考はおいておき、肯定した。魔法という便利なものがあるんだ。使わなくては損だ。使ったって、俺に損があるわけじゃあるまい。
「ありがとよ。最近は魔法嫌いが増えてねぇ。魔法を使うことで下がる買い取り価格なんて微々たるものだし、魔法を使わないとこっちも安心して買い取ることができなくてねぇ」
魔法嫌い? 魔法が使えない人たちか? と、俺は一瞬疑問に思ったが、魔法を使うのにも金を取るのだ。そう、考えると魔法も使える人と使えない人がいるのだろう。そして、今から使う魔法は店主さんにとって非常に信頼を置いている魔法だということもわかった。
「《宝石鑑定<ポリティミ・リソスアリスィア>》」
少しの静寂が入り、詠唱が終わる。宝石商は頭の中の情報を探るような素振りを見せた。すぐに探り終わったらしいが、探すような顔が終わった瞬間驚いたような顔をして、
「これはかなりのものだね! 非常に純粋な宝石だよ!」
興奮するように店主は言ったが、宝石のことをいわれても全くわからない。続いて価格でも言ってくれるのだろう、俺は少し待った。
「四つで4万ギル位かな…… 安く見積もっても」
安く見積もった宝石二つで人が一人!? 俺は衝撃を隠せなかった。驚いた表情になったのを、店主が見て、
「驚くことはない。これはそれほどの価値がある宝石だ。僕が保証する」
太鼓判を押してくれた。個人的には魔法でチートっぽくだした宝石でここまで稼げるなど完全な予想外だった。
「売ります!!!!」
俺が声を裏返しながらそう叫ぶのに、さほど時間はいらなかった。