六話、果実店
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果実店。ちょうどいいだろうと思った。腹も減った。やっぱ飯屋か。悩むな。俺は商店街みたいなところを歩きながら悩んでいた。時間は夕食時。辺りは人の群れ。瓦版が騒いでいる。王様殺害? 俺が殺したじゃん。
とりあえず、果実店に入った。夕飯時の飯屋で、個人的に頼みごとって、余程度胸がないとできないよな。
「すいません。お金見せてもらえますか?」
入ってすぐ、ノリで聞いてみたが、どう考えても不審人物だろう。店に入ってきていきなり金があるか聞く客。客観的に見れば強盗だ。金は見せてもらったほうが奪いやすいしね。
「なんでですか?」
完全に疑っているよ。当然だな。俺だって同じような人がいたら疑う。当然だ。どうやって金を見せてもらおうか。でも、異世界から来たなんて言えば、黄色い救急車を呼ばれてしまう。
「ちょっと、田舎の村から来てね。この街のお金のことを知らないんだ」
異世界に来たらとりあえず、田舎の村を出せばいいって誰かが言ってた! 誰だっけ? 細かいことは気にしちゃダメだね。
「街に入る時の入街税はどうしたんですか?」
意外と頭がいいぞ! こいつ! ぱっと見俺と同い年くらいなのに、的確な対処をしてくる! ほかの小説の主人公たちはどうやって乗り切ったんだ! 俺には無理そうだ!
「いやぁ、不法入街?」
とりあえず疑問形で言っとけば……
「おまわりさーん、こいつでーす」
「ちょっ!!!!」
意外とひどいやつだな。
「ハハハ、軽いジョークだって、ジョークジョーク」
冷や汗をかきながら、俺は言った。くっ、金を見る方法が思い浮かばない。
「ジョークですか、そうですか」
何かを納得している。わけわかんねー。
「わかったよ!? 俺がここから去ればいいんだな!?」
俺は自棄になって言う。
「いえ、お野菜や、果物を買ってくれると、ありがたいです」
買うのか……金がねーや。まてよ。目の前のこいつは女。女が好きなもの……宝石か! 宝石でも与えれば、金くらい少しくれるんじゃね!?
「ちょっと待ってろよ」
目の前の女が怪訝な目をするが、俺は気にしない。店を少し離れ、路地裏に入る。暗い雰囲気のところ。俺はそこで詠唱をした。
「《物質想像<イリコズィミウルギア>》」
母親の部屋にあった、ルビーを想像しながら詠唱する。少しすると、空からルビーが降ってきた。
「おっとぉ!?」
危ない危ない。ルビーを落とすところだった。なんとか、手中にルビーを納めたので、さっきの店に戻る。
「この宝石と、金を交換してくれ……」
俺は懇願するように言った。
「それなら、宝石商の店にでも行ってください」
そうだね。果実を売る場所で宝石が売れるわけないね。
仕方なく、俺は果実店を出て、宝石商の店に向かった。冷静に考えると、どんなお使いクエストだよって、思った。