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三十七話、二章エピローグ

 人間は、居なくなった。この村には、もう殆どの人間が、悪魔に憑かれた後、俺かソラに斬り殺された。

 宿屋のおばさんは、俺がでていくときはまだ人であったが、結構前に斬った記憶が朧気ながらある。正直、昨日の今日にあった人を斬り殺した記憶など、滓かにしか残らないものである。

「終わったな……」

 精一杯の疲労感を示しながら、俺は漏らした。本当に疲れた。今日だけで何人を殺したのだろうか。魔法で一発なら楽だが、逃げ出すほどの暇を得られなかったのは、今後の反省点にするべきだろう。

「本当に疲れましたね……」

 ソラも完全に疲れた様子だ。唯一人のこの村の生き残りは、この村のことなど気にも留めていないようだった。実際考えていることは、精々元彼の事くらいだろう。イケメンだったから名前は忘れた。うん。なんて便利な頭だろうか。

「これからどうするんです?」

 さも当然のようにソラが俺に聞いてくる。

「次の場所に行くかな。まだ世界は壊し終わっていないし」

 嗚呼、世界よ、待っててくれ、俺を。

 ポエマー的な事は似合わないな、と一瞬で自覚した。思っただけで悪寒がする。これから詩を創ろうなどと、考えない方がいいな。

「そうですか」

 ソラは頷く。

「おまえはどうする?」

 正直、ソラがこの村に残りたいというのならば、非常に残念で、惜しむべき事ながらも、俺はソラと別れたと思う。そして、俺らの人生は分かれて、進んでいったと思う。まぁ、たらればの話をしていても仕方がない。

「ついていきますよ。勿論」

「そうか」

 ソラは空を見渡していた。俺には清々しい風が吹く……と、思いきや。全く清々しくなかった。なぜなら人の血と肉の臭いがこれでもかというほど充満していたからだ。

「おぇぇ……」

 俺は一瞬吐きそうになる。

「デリカシーがないですね。折角美少女が、空を見渡すという絵になる光景をやっていたというのに」

「自分で自分を美少女っていうなよ……」

「軽いジョークですよ」

 まぁ、ジョークを言われたところで、俺の吐き気が収まるわけもなく。まだ吐きそうだ。

「《祈りの光<プロセフヒフォス>》……」

 ふぅ、元気溌剌。魔法って便利。凄い便利。

「万能ですねぇ」

「まぁな」

 勇者補正には本当に感謝しないといけないな。

「さて、」

「どうした?」

「そろそろ夕刻ですよ」

 そう、少しだけ微笑みながら、ソラは言った。ソラの目線は、空の下、地平線に向いていて、

 日が、落ちていた。

 夕暮れ。綺麗だと、純粋に思う。真っ赤に染まった太陽が、剣と剣のぶつかり合いで、少しだけ壊れていった家々を照らす。廃墟に人の死体。そこに降り注ぐ日の光。何ともミスマッチな光景だった。

「綺麗だな」

 が、綺麗だ。人の血の紅と、太陽の朱。時には家の屋根の赤も加わる。大地はしっかりと存在し、幾つかの木が、存在する大地に少しばかりの存在感を示している。それもすべて様々な紅で汚れ、その上から朱が修飾している。

「行くか」

 このままこの場所は残したいと思った。人間が腐敗するのは仕方がない、が、万物が綺麗だといえるような美しさがここにはあった。世界を壊す前に少し壊れていたと自覚できる俺の心も、美しさを感じる正常な部分は残されていた。根本的に壊れているかもしてないが、そこまで構わなくてもいいだろう。

「そうですね」

 ソラは、無表情に戻り、日は沈んだ。珍しいことに、ソラが同意した瞬間と、太陽が沈んだ瞬間は、同刻だった……

タイトルを編集しました。エピローグとプロローグ間違え、それを約一週間気がつかないとか、少し抜けすぎている気が……疲れているのかな。

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