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三話、とりあえず出ていく途中にした決意

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 王城……なのだろうか。先程のエルフが言うには帝国神殿、という場所を俺は後にしようとした。だが存外、俺に立ち向かうものは多かった。神殿の王がいた部屋。そこから出たときには、俺は兵士らしき人に囲まれていた。

「面倒だな……」

 俺は一人つぶやいた。なぜ俺がこれほどの数を相手に殺し合いをしなければならないのか。いっそ、この国全体に復讐しようか。

 一瞬だけ、考えたことだった。だが、この国への復讐はこの世界への復讐へと、俺の頭の中で進化し、俺の心の中へ波紋を広げる。

「復讐<エクズィキスィ>か……」

 俺はさらにつぶやく。そうしている間にも、

「この中で何があった!? 今まであった大きな物音はなんだ!? 答えろ! 勇者!」

 うるさき兵士が、俺に尋問しようとする。そんな尋問中にも俺の頭と心の中は、世界に復讐をするか復讐をしないかで、徹底的な討論を上げていた。

「答えろォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!」

 兵士長……だろうか? 一人装備が充実して、厳格な雰囲気が微かに漂う偉そうな兵士。そいつが叫び声を上げながら、俺に向かってきてた。両手にもっているのは……剣。

「同じ魔法ばかりでもつまらないな」

 俺は一言余裕げにつぶやく。頭と心の中に入っていた復讐の問題は、とりあえず隅に置く。

「何を言っているんだァァァァァァァ!!!!!!!」

 発狂しているような勢い。それを持ちながら兵士長は俺に突撃してくる。ただの兵士長が俺のような勇者様に勝てるわけがないだろうが。常識的に考えろよ。

「《地獄谷<コラスィキラザ>》」

 兵士長が奈落の谷へ落ちていく。いとも簡単に兵士長を落とされたことに、兵士たちは驚きを隠せないようだ。完全に逃げ腰な兵士までいる。

「つまらないな」

 俺は一言つぶやいた。煎餅の様な硬いものを食べたいのに、プリンを出されたような気分だ。

「《大きな地獄谷<メガロスコラスィキラザ>》」

 兵士たちの多くを、奈落の谷が襲う。見たこともないような大きな呪文。見たこともないような効果の呪文。見たこともないようなニンゲンの呪文。それが兵士を襲う。兵士たちは抵抗することもできずに、殆どが奈落へ落ちた。地下三十メートルくらいだろうか。俺は勝手に予測する。まぁ、三十メートルに埋まっているなら、誰か未来の人が掘り出してくれるだろう。

 残った兵士が、

「仲間の敵!!!!!」

 と言いながら、俺に剣を振るう。

「《堅き楯<スクリロアスピダ>》」

 謎の透明な楯。それが兵士を遮る。

「俺のせめてもの慈悲だ。お前くらい生かしといてやるよ」

 俺は完全な勝者の笑みを浮かべながら、兵士に言い放った。

「覚えとけ、俺は世界を壊す勇者<カタストロフィプロタゴニスティス>だ」

 そう言い放って、俺は部屋の前を後にした。


 清涼な風。それが俺を包んだ。CO2が少ない。現代の汚染された風とは違った風だった。

「清々しいな」

 俺は無意識下で、呟いていた。清々しいと言っても、帝国神殿の兵士を何百人単位で殺し、王を殺し、文官を殺し、エルフを殺してきた後だ。血の匂いは自分自身と背後から漂っている。前から来る世界の息吹。後ろと自分から漂う世界の末路。二つの匂いを浴びて、俺は決意を固めた。

 俺は、世界を壊すんだ。

 どうだっていいじゃないか。俺が生まれて初めて彼女ができて、人生が最高にハイだった翌日。無理矢理誘拐された世界。いうなれば、この世界は誘拐犯の家だ。誘拐から脱走したが、誘拐犯の家にはとらわれた。ならば壊そう。この家という名の世界を……壊すんだ。

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