二十五話、村
二章スタートです。
俺がこっちの世界にきてから、三ヶ月が経っただろうか……
「なにもない草原だなぁ」
俺は眼前の新緑を見て、こぼした。
「そうですねぇ」
ソラが同意する。結構な田舎に来てしまったようだ。街の方が壊しがいはあるんだがな。
「なんか見たことがある気がしますね……」
「おっ! まじか」
「といっても記憶程度で、具体的のどんな場所かまでは思い出せませんね」
「そうか……」
俺は残念そうな顔になる。仕方ないだろう。と割り切ることもできるが、道案内ありの旅路も一興だと思うんだ。
「にしてものどかなところだなぁ」
「懐かしい感じがしますねぇ」
率直な感想だ。のどかな場所なんだ。俺らはゆっくりと歩いた。そういえば馬はまだ連れていない。というか、もう連れる気はない。
ミルド帝国の始まりの街(俺らがそう勝手に呼んでいる)で、馬を得ようとしたのだが、次の村で馬を得てみると、意外と使えなかった。
なぜなら魔法で強化した足の方が早いし、スタミナも案外魔法で何とかなる。簡単に言うと魔法マジすげーってことだけだ。
「馬は管理とか大変そうだよな」
ふと思い言ってみる。
「買う必要ないんだから考えても意味がないと思いますよ?」
それもそうか、俺は納得した。
俺の視力で何とか村が見えた。勇者補正で視力も良くなっている。マジ便利。
「えっ?」
ソラが驚いたような声を上げる。
「どうした?」
俺は聞いた。まぁ、聞かないなんて選択肢は無い。三ヶ月の旅で俺とソラの親交も深まった。元の世界基準で友人以上恋人未満レベルのつきあいだろう。
「いや、確証はもてないんで……今は言うのは遠慮しておきます」
若干口調が固くなったな、と思った。
「そうか、ならいいや」
まぁ、わざわざ言いたくなさそうなことを聞き出すほど俺は鬼畜じゃない。逃げまどう人を追って魔法で殺すのは鬼畜ではないのか? と聞かれたら迷わず鬼畜ですと答える気がするので、俺が鬼畜なのは事実なのだろうが。
だが、歩くほどに少しずつソラの顔が青ざめていく。
「大丈夫か?」
風邪でも引いたのかと一瞬思ったが、ダルそうではなく、恐怖心なような感じで青ざめているので、病気ではないだろう。
「多分、多分なんですけれど……」
予想は大事だ。多分。先入観を植え付けない程度には大事だろう。うん。そんなたわいもないことを俺が考えているうちに、ソラが決心したのか次の言葉を紡ぐ。
「ここ、私の村かもです……」
「え……?」
また新しい波乱が、幕開けしたようだ。