二話、反逆の狼煙を上げるのはこの部屋からでいいよねっ!?
誤字や脱字を見つけた方は報告していただけるとありがたいです。
巨乳エルフに連れてこられた先は、厳格な雰囲気がある、扉だった。無駄に沢山の装飾が施されている。成金趣味とは違った空気を持つ、気位の高そうな扉だった。
「この先か?」
俺は聞いた。この扉の先に、俺をこんなところに連れてきた張本人がいるのか? 俺は迷った。この先に行って、素直に魔王討伐の任務を受けるのか? わからない。とりあえず、後のことは後に決めることにした。
「はい。この先に王様がおります」
当然のようにエルフは答えた。
「入っていいのか?」
再度聞く。まぁ、断られるわけはないだろう。
「はい、無礼がないようにしてください」
勇者より、王族の地位の方が高いのか。仕方がない。
「わかった」
そう言ってから俺は、扉を開けた……
空気が変わった。頭を全包囲から刺すような空気。それが俺の頭上から発せられていた。やばいっ、俺は思った。呑まれる。この空気に呑まれたら、俺の自我はなくなる。直感的にそう思った。
「頭が高い!!!!!」
宰相? だろうか。背が高く、すらっとした雰囲気を持つ男が、言葉を発する。それと同時、宰相らしき男の横にいた王が、こちらへ視線を…………
痛い。痛い。痛い。視線が痛い。気を抜かずとも、このままでは、呑み込まれる。痛い視線を受けた瞬間。思考すると同時に、俺は頭を下げていた。これは、やばい。
「そちが、今代の勇者か?」
王が聞く。
「はい、そうであります」
俺は答えた。呑まれそうになりながら、何とか、言葉を発した。
「そうか、魔王討伐を、【頼めるか?】」
グサッ、言葉の針が俺を貫いた。なんなんだろうか。頼めるか? のところに、異様に力がこもっている気がした。魔王討伐のことなど、俺の頭から抜け落ち、この王の力ばかりに目がいく。そして、
召還した勇者相手に威圧的な方法を取る王に従うことができるのか?
その疑問にたどり着いた。いいのか? 従って俺は魔王討伐の手駒になっていいのか? そして……魔王討伐にいったら、元の世界に……、朱里の所に、戻れるのか?
「つかぬことをお聞きしますが、」
俺は言葉を発し始める。なんだろう。一瞬部屋の中がザワツいた気がするが、俺は上から来る空気に対抗することで、精一杯だった。
「なんじゃ、言うてみい」
若干挑発的な態度。俺はそう思った。挑発……しているのだ。この王は、勇者を挑発しているのだ。なんだろう、殺意? が湧いてきた。
「俺が元の世界に戻れる方法って、ありますかね?」
向こうが挑発してくるなら、こっちだって挑発し返してやる。挑発するような口調を入れて、俺は言った。
「魔王でも倒せば、帰れるんじゃないのかえ?」
疑問に疑問で返された。ふざけたような口調。嘘か真かは、俺に判断できない。判断したい……。頭の中に真贋判定という文字が踊った。真贋判定<アリスィアブセマ>?やってやる。それと同時に、俺の頭の中に、文字が流れた。
[贋です]
そうか、と俺は一人うなずく。
顔までうなずいていたのだろう。部屋の空気が一瞬疑問の色に彩られた。
「嘘はいけませんね。王様?」
この人たちは本当に王様を尊敬しているのだろう。俺への敵意が増えた。そんな気がした。
「ばれてしもうたか」
笑いながら王様は言う。笑い事ですますなよ。と、俺は一人思う。
「本当の所、前例がないのでわからないのじゃよ」
そう言う。真贋判定<アリスィアブセマ>。俺は脳の中でつぶやく。
[真です]
そうか、納得。ただし、この真贋判定<アリスィアブセマ>の効果条件がわからないな。もし王様の知識内で真なのか、この世界の知識内で真なのか。判断する方法はなかった。とりあえず真贋判定<アリスィアブセマ>してみる。
[判断が付きません]
答えれることと、答えられないことがあるのは、わかった。
じゃぁ、やるか。
「ありがとうございます。そして、
さ よ う な ら 」
俺は最大級の敵意を持って言った。王様を警護する騎士が俺の所へ向かい、空気の棘は一層俺を刺し抜こうとする。
「《燃え盛る炎よ、空より出でし隕石よ合わさり、我が剣となれ、ケオメテオリティス!!》」
頭から流れ出るようにでてきた言葉。一瞬で魔法だと理解した。部屋の上から炎に包まれた隕石が降ってくる。周りにいた文官は弾け飛ばし、騎士の鎧を焼け焦がす。天助から降る隕石の数は続々と増えていき、地面についた瞬間に消える。弾けるような炎は床を焦がすことはなく、天井と床の間の空間だけを焦がしていく。
「ギャァァァァァァァァァァァァfるdふぁうdげ!!!!!!!!!!」
謎の悲鳴が数々上がる。人を殺すことに、俺は心を痛めたが、魔法という人外を使ったことにより、不思議とそれは和らいだ。
「彼女と付き合い始めたばかりの人間を、召喚するんじゃねぇよ」
俺は吐き捨てるように言った。それを見、まだ死んでいない人々が俺を睨みつける。
「なぜっ、我のスキルが効かぬっ?」
王様は疑問の声を上げる。まだ死んでいないのか、と思い。
「《ミクロスフォティア》」
と、詠唱をする。俺の中の魔法力<マギアズィナミ>から小さき火がエネルギー体として出る。その火は誰にも触れないまま、王の心臓に近づき……弾けた。
「なっ!」
王の断末魔の叫びが部屋の中に響く。
「さようなら、愚しき王様<イリスィオヴァスィリャス>」
そう俺は呟いた。辺りを見渡す。先程の巨乳美少女、エルフが見えた。
「どうだい? 気分は」
俺は聞いた。
「なぜっ、こんなことをっ」
エルフは俺に聞いた。当然の疑問だろう。だが、
「質問に質問で答えるなって、親に教わらなかったのか?」
俺は相手の質問を無視する。エルフは今この状態で、死にそうだ。熱さのためか、顔を歪ませ、こちらを睨んでくる。
「こっちの質問に答える気はないのか」
先程の熱き隕石<ケオメテオリティス>の出力を強くする。
「熱いっ!? 熱い!!!」
エルフが悲鳴を上げる。内容上俺の質問の答えに適した回答だ。
「そうか、」
俺は満足した。ついでに、先程の質問に応えようと思った。
「俺がこんなことをやる理由? 当然じゃないか。俺の未来を奪った奴らへの、人外による復讐<エクズィキスィ>さ」
厨二的ワードを交えながら言う。そんな回答している間に、人々の生体反応は限りなくゼロに近づく。屍と炎と岩の山。その中心に、俺は立つ。とりあえず、真贋判定<アリスィアブセマ>でこの部屋内の生存者の数を確認する。
[存在します]
「チッ!」
俺は舌打ちした。真贋判定<アリスィアブセマ>を使っても、生存者の数まではわからなかった。予想外に使い勝手が悪い。便利なのは事実だが。
「助けて……助けてください……」
エルフが、俺に命乞いをする。目障りだな。と俺は思う。先程王に放った魔法と同じ魔法を放つ。
「《ミクロスフォティア》」
小さな火が、エルフの心臓を焼き焦がした。
「さてと、行くか」
俺は部屋を後にした。