十五話、ホットドック風の食べ物とか
歩きながら横のソラを見ると、ムスっとした表情は崩していなかった。
「いつまでキレてるんだよ……」
一回宿屋に入って、服を着替えた(ソラは俺たちの服を服屋で何枚か買っていた)。
夕食付きの宿屋だったのだが、まだ夕食まで時間はあった。なので、一緒に外で適当にぶらぶらしようということになった。結構時間は経っていると思うのだが、ソラは不機嫌なままだ。
「キレてなんかいないですよ。場所や状況をなにも考えずに、勇者という特権で魔法を使うという、行為に異議を呈したいだけですよ」
それを世間ではキレているっていうと思う。うん。おっ、前に……屋台的なものが見えたな。
「あれでも食うか?」
旨いかはわかんないが、屋台的なところなんだ。独特な味を放っているだろう。
「いいんですか?」
ソラは聞いてきた。
「ぜんぜんいーぜ。旅の仲間なんだから親睦を深めたいしな」
不機嫌もなおしたいしな、と続けたかったが、我慢した。
「ありがとうございます」
ソラはお礼を俺に言ってきた。別に旅の仲間になる仲なんだから、そこまでかしこまらなくてもいいのにな。
「何で敬語なんだ?」
耐えきれずに俺は聞いた。
「慣れてますから」
間髪入れずにソラは答えた。よく聞かれるといった風だ。たぶん昔からずっと敬語なんだろう。
「そうか」
それ以上敬語について聞くことはなかった。あんま意味ないしな。
「旨いな、これ」
屋台ででてきたのは、元の世界でいうホットドックのようなものだった。ただ、味は少し淡泊な感じはした。
「そうですね……」
こちらに笑いかけ、うれしそうに彼女は答えた。まだ金はあるし、さっきの宿屋で、ちょっと複製しといた。まぁ、こんな時くらい見栄を張って、ソラに奢ったっていいだろう。怒りをなだめるためでもあるけどね。
横を見ると、ソラはもうホットドック風の食べ物を食べ終わってた。俺よりも早いんだな、と思いながら、俺は口に付けていたホットドックを離し、
「もう一個食うか?」
一瞬だけ彼女は悩んだようだった。だが、すぐに顔を煌めかせ、
「はい!」
と答えてた。よく食べるな、と思いながら、俺はホットドック分の金を渡した。銅貨四十枚……多くね? 銅貨と銀貨の間の金がほしいと思った俺だった。十円玉で、四百円のものを買う人はいまい、そう思った。そして、俺が銅貨をソラに渡した。瞬間、ソラは怪訝な目になって、
「なんで、銅貨なんですか? 大銅貨を使えばいいのに……」
そんなものがあるのか、一瞬そう思ったが、なら、銀貨を渡せば大銅貨が返ってくるよな、と思い、銅貨をソラから受け取って、銀貨を渡した。
少し後、ソラはホットドック風の食べ物を二つ買ってた。
ホットドックを食べているソラを見て思った。俺は何故こんなところでノンビリしているのだろうかと、世界を壊さなくてはいけないんじゃないのかと。
なぜ、俺は誘拐犯の家でくつろいでる?
俺は即刻この世界を壊したい。生きる糧を得たら、すぐにでも壊したい。だが、壊すための行動に、ホットドック風の食べ物を食べることは含まれているのだろうか、俺は疑問だった。
「どうしましたか?」
ソラが俺に聞いてきた。聞くほど考え込んだ表情をしていたらしい。
「なんでもない、それで、大きめなバッグとか売っている場所はどこだ?」
探そう。生きる糧を。出来るだけ、早く探そう。壊したい。世界を。早く壊そうよ、世界を。