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一話、異世界に召喚されたら、そこは神殿だった

 目が覚めた。ここはどこだろう。前後の記憶が曖昧だ。目を開けた。目の前に見えるのは? 乳、乳、乳。

「は!?」

 俺は悲鳴をあげた。何故俺の目の前に巨乳があるのだろうか? まったくもって判断できない。前後の記憶も曖昧なまま。記憶喪失なのか? と、自問する。

「お目覚めですか、勇者様?」

 目の前のデカ乳美少女が俺に聞いてくる。ふつうの男なら一目惚れしていただろう。並の男じゃなくても一目惚れしていただろう。人形のような端整な顔立ちに、スラっとのびた、長い髪。俺だってきれいだと思う。だが、俺は、

 貧乳派だ。

 派閥というので、自分の欲望は抑制できるものだと、俺は今知った。グルッと周りを見る。ここは……石造りの部屋だった。石造りといっても、不思議なことにごつい雰囲気は全くなく、神秘的な感じがした。自分の下にある魔法陣もそう思わせる一因になっているだろう。ただ、

「ここはどこだ?」

 俺が疑問の声をあげるような場所だというのは確かだ。神秘的だといっても魔法陣は魔法陣。オカルト的な感じがするといってもいい。それと、目の前の美少女。俺を勇者様と呼んだ。その二つから仮定する。俺は異世界に転移された。または、ただ単に誰かのいたずら。その二つの可能性が考えられた。だが、冷静に考える。魔法陣と、今の俺の思考。どっちが非科学的か……

 俺の思考だな。

「ここはどこだ?」

 わからないならとりあえず質問。これまで16年だか17年だか生きてきて、俺が得た結論だ。

「ここですか……帝国神殿ですね……」

 帝国……帝国か。俺がもと居た地球という世界では、帝国なんて聞いたことがない。

「なに帝国だ?」

 当然のことを聞いた。その前の名前がわかれば、地球……のことなのか。それ以外の世界なのかがわかる。ドッキリという線は、目の前の美少女が着ている服。無駄に高そうな神官服。使い込んでいる雰囲気があり、なおかつ神聖で高そうだ。こんな服を用意するとは、一介の高校生にするドッキリとしては度が過ぎているだろう。

「ミルド帝国ですね」

 そんなことも知らないのか。勇者様は。とでも続きそうな調子で、美少女は言った。

「ありがとうございます」

 感謝し、俺は立ち上がった。こんな場所にいる意味はない。俺は早くもとの世界に戻るんだ。

 俺は歩きだした。早く朱里に会いたい。その一心で、俺は歩きだした。だが、美少女が止める。もう一度冷静になって周りを見渡すと、ほかにも何人も巨乳美少女が居た。貧乳は居なかった。残念だ。

「どこに行かれるのですか?」

 はじめの巨乳美少女に質問された。

「もとの世界」

 一つだけ呟くと、俺はまた歩きだした。また止められる。そんなに俺と話したいのか。俺は話したくないんだがな。

「王様と謁見していただかないと……」

 困ったように巨乳美少女は言う。さっきの服が神官っぽいから、エルフちゃんでいいや。

「王様?」

 と俺は聞く。王様が居る国なんていくつあるだろうか。無知な俺は地球の知識でもわからない。まぁ、仕方ない。俺は無知だ。

「はい。王様です。勇者様を召還されたので、任務を頼みたいと仰っております」

 勇者。任務。その二つのキーワードから連想されるもの……魔王。俺は魔王討伐の手駒にされるのか? 俺は元の世界に帰りたいだけなのに。だが、王様と言うんだから、元の世界に帰る方法くらい知っているのではないだろうか。俺は考えた。

「わかった。行くよ」

 十数秒後、俺はそう答えていた。

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