第3話 ステッペン・ブラック・ウルフ 2
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「わぁ!」
私はとっさにヴォルパーティンガー達を避けようと横に移動するが、避けた先に青年がいつの間にか移動していた。
私は、まんまと青年の胸に飛び込んでしまった。
瞬時に、青年の手が私の首と片手をとらえる。
「何する…!わうっ」
そのまま押し倒される形で地面に倒れ込んだ。
首を押さえつけられて、動けない私の腹と胸の上に、さっきの白いヴォルパーティンガーが二匹とも、どっかりと座り込んだ。
「ぐえっ」
白くてフワフワしたウサギの癖に、結構重い。
…いや、尋常じゃなく重い。
…てか、だんだん重さ増してないコレ!?
死ぬ!死んじゃう!!
私がアワアワジタバタしていると、青年は私の首にかけた手に力を込めながら、言った。
「黒き狼よ、金の首輪の契約のもと、唯今から我に忠実を誓うか?」
「はぁ!?」
私は混乱して叫んだ。何も考えられない。
私の上のヴォルパーティンガー達は、さらに重さを増して行く。
こなきじじいか!!
あまりの負担に背骨が鳴る。
ギリギリ、自分の体が悲鳴をあげる音が、耳に届いた。
く…苦しい!!これはヤバい!潰れる!
しかも、胸の上にいる奴の重圧で、息をするのも辛くなってきた!
「い…っ意味が分かりません!それよりこいつら!どけて!重すぎる!」
「誓うと約束するならどけてやるよ。汝、我に、忠実を、誓うか!?」
「誓う!誓うから!」
内臓飛び出るわぁ!!!
私が叫ぶと、青年は私の首から手を離した。
同時に白いヴォルパーティンガーも、空気のようにかき消えた。
重さは一気に感じなくなる。
私はホッとして息をつき、咳き込んだ。
あー!まじで死ぬかと思った!
「やっぱり狼か。すごい力だ…良かった、さっさと誓ってくれて。手加減したらこっちが危ないから、殺すとこだったよ」
彼は笑顔で言う。
こいつ…ドSだ!
しかし、狼なんてどこにも居ないけど。
さっきから何の話をしてるのこのひと?
コロッと態度をひるがえし、青年は私の手を引っ張り上げて立たせてくれた。
「僕はヴォルパーティンガーの、ユリアン・フローゲ。君は?」
改めてコスプレの紹介までしてくれたよ。
ユリアンてめぇコノヤロー、乱暴された恨みは忘れないからな!
てゆーか、なにゆえあんないじめを受けたのかしら、私。
いやまず、いちばん気になるのは、あの謎のヴォルパーティンガー達だよ!どっから出てきやがったあいつら!
そしてどんどん重くなるなんて言う…手品だよね?
とにかく、本当に苦しかった!
内心はらわた煮えくり返りながらも、相手に名乗られてしまっては、こちらが名乗らない訳にもいかない。
私はおざなりに応えた。
「雨宮、香子」
「アマミヤ?…宜しく、アマミヤ」
ん?名前が雨宮で、姓名が香子だと思われたかな?まぁいいか。
「それではアマミヤ、僕らと一緒に来なさい」
ユリアンはにっこり笑って、手をさしのべてきた。
私はユリアンの態度の変わりように拍子抜けして、何だか調子のいいやつだな、と腹がたってきた。しかも、何故に命令形?
けれど、今はユリアンについていった方が、ずっとこの荒れはてた場所にいるよりは、自分の為になるかもしれない。
だって、一緒に来なさいって、トラックに乗せてってくれるってことだよね?
ひいては、ハルカに会い、白い少年の名前を探し出し…元の世界に戻るために。
移動手段が、あっちから来てくれたわけだ。
これは、ラッキーだと思っていいんじゃないか?
その口調が気に入らなかったから、私はユリアンを睨む。
ユリアンは首をかしげる。
まぁ、とりあえず、利用してやる…じゃなくて、好意に甘えようか。
しぶしぶ私は言った。
「宜しく、ユリアン」