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第十四章 新たな光の境界

 東京の街は、久しぶりに平穏を取り戻していた。


 街灯に照らされる人々の笑顔。

 夜空には澄んだ星が輝き、赤黒い裂け目の痕跡はもはやどこにも残っていない。


 澪は境界管理局の屋上に立ち、夜風を胸いっぱいに吸い込む。

 全身に残る光の感覚が、まだ静かに揺れている。


(……終わったんだ……本当に、終わった……)


 ナギが澪の隣に腰掛け、空を見上げた。


「静かだな。久しぶりに、落ち着いて見える」


 澪は小さく頷く。


「でも……私の胸にはまだ……光の残響がある。世界の境界と、まだ繋がっている感じがする」


 神崎玲司が背後から近づき、手をポケットに入れて言った。


「そうだな。お前の力は世界と直結している。完全に切り離すことはできない」


 澪は少し息をつき、視線を二人に向ける。


「でも……怖くはない。これからも守れるって、少し自信がある」


 ナギが笑った。


「おう、頼もしくなったな。昔の澪じゃ考えられなかったぞ」


 神崎も穏やかに笑う。


「これが成長というやつだろうな」


 境界管理局内では、事件後の復旧作業が進んでいた。


 九条千景は資料の整理をしながら、澪の背中を見つめる。


「澪……本当に頼もしくなったわね。あんな力を使いこなすなんて」


 澪は微笑んだ。


「九条さん、ありがとう。私、一人じゃここまで来れなかった」


 九条は少し笑みを浮かべ、肩を叩く。


「いいのよ。お互い様。これからも、あなたの力は世界を守る鍵になるわ」


 数日後。


 澪はナギと神崎とともに、日本各地の境界の安全確認を行っていた。

 北海道、名古屋、関西、九州――各地の裂け目は完全に閉じ、異界の痕跡は消えていた。


 ナギが澪に言う。


「全国を回ったけど……思ったより、人々は知らずに過ごしてるんだな」


 澪は少し苦笑する。


「異界事件の影響が目に見えないから、普通に日常が続いているだけ。でも、だからこそ、私たちが守らなきゃいけないんだって思う」


 神崎が遠くを見つめながら言った。


「世界は確かに平穏を取り戻した。だが、この先も危険はある。異界は常に存在する」


 澪は頷く。


「だから、私たちはもっと強くならなきゃ……」


 ナギが小さく笑う。


「ふふ……そうだな。俺も手伝うぜ、次の戦いに向けてな」


 数週間後。


 管理局の訓練場では、澪が光の結界の制御を練習していた。

 光は以前よりも滑らかに、自在に操れるようになっている。


 神崎が隣で剣術の指導をし、ナギは澪の光の流れを観察していた。


「ずいぶん安定してきたな」

 ナギが言う。

 「この調子なら、世界規模の異界が来ても対応できる」


 澪は汗を拭いながら頷く。


「まだ不安だけど……少しずつ、自分の力を信じられるようになってきた」


 神崎が笑みを浮かべる。


「頼もしい限りだ。だが、慢心は禁物だぞ」


 澪は軽く笑う。


「わかってる。私、もっと強くなるから」


 その夜。


 澪は再び屋上に立ち、東京の夜空を見上げる。

 星の光が澄んで見える。

 街の明かりが輝き、人々の生活は守られている。


 胸の奥に光が静かに揺れる。

 黒幕は倒されたが、異界の脅威は完全には消えない。


 それでも、澪は心の中で決意を新たにした。


(……私が、境界の鍵。世界を守るのは、私の役目……!)


 遠くに見える夜景の向こう。

 次に来る異界の波を、澪はもう恐れない。

 光の力は彼女とともにあり、世界の境界を守り続ける。


 ナギがそっと隣に立つ。


「さあ、これからだな。私たちの新しい日常は、ここから始まる」


 澪は小さく微笑み、夜空を見上げる。


 そして――


 世界は、静かに、しかし確実に、新しい光の境界線のもとで守られていた。

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