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第十二章 鍵の覚醒

 名古屋上空。


 赤黒い裂け目がビル群の間に開いている。

 霧のような異界の影が街に溢れ、人々が恐怖に震える。


 澪は地上に立ち、胸に手を当てる。

 光の感覚が体内でうごめく。

 全国の異界の裂け目が呼応していることを、澪は肌で感じた。


(……全部、私に繋がってる……)


 ナギが隣で指を鳴らす。


「おう、澪。今度は本番だ」


 神崎が後ろから声をかける。


「焦るな。お前の力を最大限に引き出せ」


 澪は深呼吸する。

 光が指先から溢れ、足元の地面に紋様を描き出す。

 それは、上巻で初めて見た結界と同じ模様――だが、より大きく、より複雑で、力強い。


 赤黒い霧が近づく。

 澪は目を閉じ、心の中で呼吸を整える。


(閉じる……!)


 光が全身を包み、街全体に波紋のように広がる。

 異界の霧は抵抗しようとするが、光が触れた瞬間、爆ぜるように消えていく。


 ナギが跳び、影の怪物を蹴散らす。

 神崎は剣を振るい、残る異界の力を削る。


 澪の胸の奥、境界の感覚がさらに膨張する。

 目の前に見えたのは――


 日本列島全体を包む光のネットワーク。


(……世界と繋がってる……!)


 澪の力は街だけに留まらず、全国の裂け目を感知し、次々と閉じていく。

 北海道、関西、九州……光が駆け巡る。


 空には光の柱が立ち、赤黒い裂け目は次々に消えていった。


 だが、その瞬間――


 空気が強く震え、光が歪む。

 澪の視界に、巨大な影が浮かび上がる。


 黒幕だった。

 遠隔で操作していた装置により、裂け目を再拡張させ、澪の力に挑んでいる。


「……なるほど、境界の鍵か」


 黒幕の声が空気を揺らす。

 それは澪の胸奥に直接響くようだった。


「やめ……!」


 澪は叫ぶが、光の力が暴走を始める。

 胸の中で境界の感覚がひび割れ、力が制御を超えて膨れ上がった。


 ナギがすぐ横に飛び出す。


「落ち着け、澪!」


 神崎も声を張る。


「全力で受け止めろ!」


 澪は必死に光をコントロールする。

 体の周りに渦巻く光が、赤黒い裂け目とぶつかり、巨大な爆発を起こす。


 街が揺れ、瓦礫が舞い上がる。

 だが、澪は耐える。光を体内に取り込み、意識を一点に集中させる。


 やがて――


 赤黒い裂け目が、一つ、また一つと消えていく。

 空は少しずつ落ち着きを取り戻し、光は澪の体を中心に穏やかに広がった。


 澪は地面に膝をつき、息を切らす。

 ナギが肩に手を置く。


「……やったな」


 神崎も剣を鞘に納める。


「これで一応、全国の裂け目は閉じられたようだ」


 澪は光の感覚を胸に感じながら、微かに笑った。


「……私、やったんだ……」


 ナギが頷く。


「お前は、世界の境界を守る鍵だ。覚醒したな」


 だが澪はその言葉に、少し不安げに眉をひそめた。


「でも……黒幕はまだ生きてる。あの人が本当にやりたいこと……まだ終わってない」


 神崎が顔を曇らせる。


「これからだ。世界規模の戦いは、まだ始まったばかりだ」


 澪は光の感覚を胸に抱き、遠くの夜空を見上げた。


(……私、逃げない。絶対に、世界を守る――)


 夜空に輝く光の柱。

 それは、新たに覚醒した「境界の鍵」の力だった。

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