No.03 タイタン
謎の大男の追跡から逃れ、藍田の言うアジトの仲間と合流し、車で移動することになった瞬。ようやくひとまずの安全を手に入れ、現状を理解するために冷静に話を始める。
「あの、藍田さん。助けてくれてありがとうございました。」
「よく頑張ったな、少年。無事にここまでこれてよかったよ。」
「あ、俺稲波 瞬って言います。」
「そうか。よろしくな、瞬。」
それから藍田は所属する組織のことや特別な力のこと、そして“敵”のことについて説明をはじめる。
「説明が遅くなってすまなかった。僕たちは“タイタン”という組織に所属している。僕らの組織はその多くが特殊な能力を持つ者“支配者”で構成されている。感づいているかもしれないが、君もすでにその力に目覚めている。“支配者”の力については君も目の当たりにしただろう?」
「はい、様々な概念に対して干渉・支配する力…。」
大男襲撃時の藍田の戦闘や、自身が咄嗟に木の枝を使って敵の攻撃を防いだことを思い出す。
(あれが俺の力によるものだったと言うなら、俺が使える力は”木”に関係するもの?)
「…まだ確信はないが君の力は”植物”に作用するものかもしれないな。そして”敵”についてだが、君を襲ったあの黒いフード。やつは“アルゴノーツ”という組織の一員だ。奴らは“支配者”を人類の敵とし、その殲滅を目的としている。裏に何が絡んでいるのかは不明だが、とてつもない技術力を持っており、特殊な武器を使って“タイタン”に対抗する力を得ている。」
「なるほど…。でも連中はなんで俺が“支配者”だって分かったんでしょうか?」
「ああ。僕らは力を使う際に特殊な電磁波のようなものを発している。僕らはそれを感知して仲間の位置を知ることができるし、敵もそれを感知するなんらかの手段を持っている。僕やあいつが君に気づいたのは君が無自覚に力を使ったからだろうな。」
(無自覚に…か。植物に関係しているとしたら学校でクスノキを触ったときか?そうじゃなくても植物なんてそこら中にあるもんな。)
藍田の説明を経て瞬はようやく自分が置かれている状況を少し理解することができたのだった。魔法のような力を手に入れて嬉しいという気持ちもある反面、それ以上に“アルゴノーツ”という正体不明の集団に命を狙われるという状況が恐ろしかった。不安が顔に出ていたのだろう、瞬の気持ちを見透かしたように藍田が口を開いた。
「無理に戦いに参加しろということはない。ただ自分の身を守る術くらいは覚えておくといい。…さぁ着いたぞ。」
「え?着いたっていっても建物は周りに全く見当たりませんよ?」
キョトンとする瞬の顔を見て藍田が笑いながら言う。
「ふっ。まぁ見ていれば分かるさ。」
次の瞬間突然地面が割れ、中から要塞のような巨大な建造物が顔をのぞかせる。野球の試合を行うドーム会場3個分くらいの大きさは優に超えている。
あまりに規模の大きいその光景に、瞬は開いた口が塞がらなかった。
「驚いたか?“支配者”のなかにはこんな力をもつものがいるということだ。君の能力も使い方や磨き方次第では強力な力を持つ可能性があるだろう。」
ついさっきまで不安で曇っていた瞬の目は、力の持つ可能性を目の当たりにし、いつの間にか輝きを取り戻していたのだった。




