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23 また明日
やがて倒れていた獣人たちは、次々と目を覚ました。
ただし――失踪した者たちが戻ることは、ついになかった。
世界はこれを“大規模災害”と記録した。
失われた命のために合同葬儀が営まれ、学者たちには古文書の再調査と今回の事態の報告が命じられる。
ゼフィルもその例外ではなく、再び机に向かう日々が始まろうとしていた。
◇◇◇
燃えるような朝日を背に、ドライアドは仁王立ちしていた。
「その力があれば、この世界の王となることもできよう」
ゼフィルは背後の巨大温室を振り返った。
仲間と共に過ごした静かな場所。
深く息を吐き、答える。
「魔素は尽きた。二度と神気など出るまい。
それに俺は王の器じゃない。ただの学者だ」
「……そうか。残念だ」
ドライアドはにっかりと笑みを浮かべ、斧を背に担ぐ。
「それでは、私は帰る。また来る」
振り返ることなく、精霊は朝日の彼方へ歩み去った。
「……あいつ、“また来る”って言ったか?」
「うん、確かに」
肩をすくめるゼフィルに、カイが微笑みを返す。
二人の間に、柔らかな光が差し込んだ。
また、明日から研究の日々が続く。