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22 光
ゼフィルの叫びが、雨空を突き破った。
――静寂。
目を開けられないほどの光。
ひどい耳鳴り。
時間さえ止まったように、あらゆるものが沈黙する。
一拍遅れて、魚人の戦士たちは煙のように掻き消えた。
押し寄せていた黒い潮も、亀裂も、光に溶かされるように消えていく。
ドサッ。
ドライアドが膝をついた。
ゼフィルはカイを抱き抱えたまま駆け寄る。
「……よくやった……」
かすれた声。
「……え?」
「よくやった!!!」
怒鳴るような賞賛に、ゼフィルは呆然とした。
厚い雲の切れ間から、淡い陽が差す。
その光に照らされるように、カイが小さく呻き声をあげた。
「カイ!」
「……あ……れ?」
黒い瞳がゆっくりと開かれる。
「どこか痛むのか!?」
必死な声に、カイは戸惑いながら両手を掲げた。
抱えていた世界樹の芽。
「枯れてる」
茶色くしなだれた二葉は、指先が触れただけで砕け散った。
陽光が大地を照らす。
束の間の静けさの中、三人はただその光に包まれて立ち尽くした。