表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/23

13 異界の海

 水の中に投げ出されたようだった。

 水面に背中を打ちつけ、激痛が走る。

 抗う間もなく、そのまま深く沈んでいく。


 助けを求めようと口を開くが、声は泡となって水面へ昇っていった。

 伸ばした手に、誰が気づくというのか――。


◇◇◇


 やがて背が海底に触れる。

 なんとか体勢を立て直し、手で水を掻くと、ぎこちなくも歩けることが分かった。

 不思議と呼吸はできる。


「……龍神は水を司る、か。血のせいか?」


 これまで頭まで水に沈んだことはなかったが、今は呼吸に支障はない。

 遠くに気配を感じ、近くの岩陰に身を潜める。


 自分よりも大きな魚が三匹、悠然と通り過ぎていった。

 下顎から突き出る鋭い牙――あれに狙われればひとたまりもない。


 魚影が去ったのを確認して、再び歩き出す。


 ここはどこだ。

 なぜ俺はここにいる――。


 頭の奥が靄に覆われたようで、思い出そうとしても焦点が合わない。

 ふと頭上を魚の大群が横切り、その壮観に気を取られる。


◇◇◇


『………! ………!!』


 鋭い声。言葉は分からない。だが、本能で「良くない」と察した。


 振り返った先にいたのは――魚人。

 尾鰭を持ち、逞しい上半身。

 顔の造形は獣人に近いが、耳は魚の鰭そのもの。

 瞬きのない大きな瞳がこちらを捕らえている。


 四、五人……いや、奥にもっと。

 槍を構え、こちらを指差した。


 慌てて逃げる。だが二本足の動きは鈍い。

 尾鰭を持つ魚人に敵うはずがない。


 長い銀髪が引かれる。

 背後から強く掴まれた。


『……ツガイ……!!』


 腕を押さえつけられ、口を覆われる。

 水中に、抵抗の声は響かない――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ