潜伏先
警戒し確認すれば、それは神道者の大禅であった。呪師の居場所を突き止めようと、小袖に着替え密かに動いていたのである。
「何か解ったか?」
「ようやく目撃者が」
「知る者か?」
「その者は未だ子供にて、かくれんぼをしており隠れていたところ、偶然それを見たと」
「その子は何処に?」
大禅が案内の元、道忠と時貞、それに小平太と仁平が町人の家を訪ねれば、大禅に情報を齎した子供の記憶を道忠が読んでいた。
その者の顔や特徴を読んだのだろう、道忠は静かに頷いて見せた。
「日中よく見かける軽業師達の一人にございます、その様子から単に頼まれただけと見て間違いございません」
「ならば、軽業師が住まう小屋へご案内を」
軽業師が生活する小屋の前で声を掛ければ、警戒しつつも一人の男が顔を出した。
「夜分にすまぬが、この家より悪鬼を感じる故、声を掛けさせてもらった」
「はぁぁ?」
「最近、不審なる怪我や病気はないか? もしくは物の損壊など」
「全くねえよ! とっとと帰りな!」
その瞬間に小平太と仁平は親指の爪上に仕込んでおいた小石を弾き、置いてある椀や酒樽を破壊した。
外の様子を知らない男たちは何事が起きたのか騒ぎとなれば、応じた男の顔色も変わる。
「やはり何かありそうだな」
「おいおい、あんたらが何かしたんじゃあねえのか!」
「何のために?」
「知らねえよ! 言っとくが銭なんかねえからな!」
「うむ、結構」
中に入れば、山蝉に書を託した人物はすぐに見つかったようだ。道忠が目配せをすれば、時貞と共に悪鬼を払う振りをしながら一人ずつ手をかざした。
呪いが発動する事も無く無事に読み終えれば、四隅に塩を盛る様言い残し宿所へと帰ったのである。
軽業師と接触した者の顔が判るも、道忠に見覚えなど有る訳もない。となれば関係者の中にその者がいると信じ大禅の記憶を読んだ。
「鬼騒動が起きてから、目にした人物を出来る限り思い出してください」
「承知いたした」
道忠も大禅も目を閉じ集中をしていた。半時ほど経っても見つからなければ、更に範囲を広げ、知っている神道者やその関係者にまで及んだ。更に時が過ぎるも諦める気配は無い。
「あっ? 今の記憶をもう一度お願いします」
大禅はもう一度記憶を辿り直した。かなりの強風の中、竹林で瞑想に耽る者がいた為、記憶に残っていたのである。
「間違いない、この者は一体?」
「神道者ではなく、全く見知りおかぬ者ですが、何者か気になり目に留めた記憶が」
「場所は?」
「この時は嵐山でしたが、この者ならつい先日、町中で見たような気が……」
「なんと!」
その記憶を道忠に見せれば、間違いが無かったようだ。
「それより少し手前より願います」
記憶を少し戻し見れば、男は一軒の家から出てきた直後に大禅とすれ違っていたのである。大禅は覚えて居ないのだが、記憶にはしっかり刻まれていたのであった。
「恐らくここが潜伏先」
「大禅よ、でかしたな」
「山蝉へせめてもの弔いとなりましょう」
「そうだな」
呪師が単独なのか複数人なのか、先ずは知る必要がある。守り人が吹き矢で動きを封じ道忠が読む事となったのだが、これには注意が必要となる。
呪師は探られぬ為に自ら呪いを掛けている可能性が有るのだ。ならば、尋ねる前に解呪が必要となる。
「形代は上手く行きましたが、果たして呪師に通用するか」
「道忠の霊力であれば問題無かろう、では早速参るかな」
月夜の中、通りを行けば形代の監視も何もなく、大禅の記憶にあった家の近くまで来たところである。小平太は仁平と佐一を伴い、道忠と時貞と共に通りを歩いた。




