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小鬼

 歩き行けば、程なくして一行を監視していた忍びが町人に紛して待ち構えていた。近淡海で陸路を走った忍びは、一行が森へと消えた事を知らずに先を急いだため、先に京へと到着していたのである。


 役人の案内の元、一行は町衆が集う場として建築したという講堂へと案内された。


 此処は神道者の長とも言える蒼天により、小鬼の存在を聞かされた町衆が鬼退治の拠点として使うように開放したようだ。それは無論、此処まで復興を成した京を壊されては困るからである。


「此処が皆さまの宿所となります。詳しくは此処の者からお話があるので、私は此れにてして失礼を」

「世話になったな」


 丁寧に頭を下げた役人が去れば、少しして新たな男が現れた。この者が一切の説明をするに違いない。


「此度の鬼騒動、皆様へ情報の提供とご支援等、お手伝いさせて頂く吉岡忠泰にございます。して、早速ですが自然の術の使い手を確認させて頂きたく」


 面白半分で偽物が来る可能性も否めない、ならば確認するのは当然の事と言えよう。


「おらだで……」


 術者が子供であっても、驚く事も無く無言で頷いて見せた。


「先ずは術を拝見いたしたく」

「此処でか?」


「いかにも」

「そうか、なら風を吹かせてやると良い」


 道忠に貰った扇子を懐より取り出せば静かに開き、扇いで見せた。何かが吹き飛ぶ事は無かったのだが、吉岡の顔面と着物は風圧に晒される事となった。


「自然の術、確かに拝見仕りました」


 そう言うと吉岡は深々と頭を下げた。


「遠路はるばる良くぞおいでくださいました」

「これだけの人数、迷惑ではないか?」

「全くもって問題ございません」


 無論、吉岡は曖にも出さないのだが、これだけの人数分の食事と床を用意するのは、大変な事である。道忠と時貞が深々と頭を下げれば一行もそれに倣った。


「ところで此処に来るまで案外、平常の様子だったが小鬼はどうなっておる?」

「今も、人にとり憑き魂を奪ってございます」


 小鬼も鬼も半透明で、見る事のできる者は霊力のある者に限られる。故に、このところの死者が増加傾向にあるのは、単なる自然死と捉えているらしい。


「で、犠牲者の数は?」


 小鬼が鬼と化すまでに凡そ五十人の魂を喰らうと記されていた、ならば犠牲者の数は重要な目安となるのだ。


「小鬼と判明してから既に三十四人」


 小鬼の存在を認めてから数えたから、実際には既に五十人を超えている可能性がある。ならば、今すぐ変化する可能性もある。


「なるほど、では早速小鬼とやらを見に行くか」

「承知」


 陽が落ちるには未だ時があった。故に先ずは小鬼なるものを確認するべく吉岡の案内で町を歩いた。


「鏡の御二人にお会い頂こうと思ったのだが、蒼天様はどちらへ?」

「どこぞの堂に籠られ、念じていると聞いてございます」


 蒼天とは京を中心に活動する神道者で、凄まじい神通力を扱う事で知られていたが、常世の妖には通用しない事を知り堂に籠った様だ。


「現世の術が通じなければ、皆の安全を願うのみ……力があるだけに辛い事だ」


 やがて町人が住まう区画へと入れば、吉岡の足が止まった。どうやら小鬼はこの中に居る様だ。


「私には見えませぬが、皆様であれば姿を見る事が可能かと」

「なんか、えらい寒気がするだで……だ、大丈夫だでか……」

「さて……では念のため用意しておくか」


 そう言いつつ、道忠に目配せをすれば二人は小さな護符に家紋のような記号を記し、皆に配ったのである。


「これは小鬼とやらに憑かれない為のお守りです、懐へ入れておいて下さい」

「常世の妖に通用するか判らぬが念のためだ、効かぬ時は逃げる他あるまい」

「承知」


 間もなく、吉岡が警戒しつつ家の戸を叩けば、若い女が顔を出した。


「お役人様……?」

「弥介の具合はどうだ?」


「え? うちの人をご存じなのですか?」

「まぁ、見回りで二、三言葉を交わすくらいだったがな、臥せていると聞いたから様子を見に来た」


 腕の良い大工であった弥介は突如体調を崩し四日が過ぎたという。仕事など出来るような状態ではなく、今は床に臥せているらしい。


「うあぁぁあぁ!!! あぁぁぁっ!」

「ちょっと! お前さん!」


 突然の絶叫に慌てて振り返ると、女は弥介の元へと急いだ。身体に掛けた着物から苦しそうに手を伸ばしくうを握り息絶えた所で、《《それ》》は身体から離れたようだ。勢いよく戸外へと飛び出して来たのである。


「だっっ! とっ! とっ! とんでもねえっ!」

「おいおい……これは凄いな……」

「これが小鬼か……」

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