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正しい吸血鬼のなり方  作者: 冬月 葉
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 幼い子供の姿をした悪魔がいる。そう報告を受けてコリアルの田舎町にやってきた。列車の中でも、白の神父服は、皆の尊敬を集め、拝む人さえいる。…拝まれる事には慣れないが、自分が守るべき人がいる事に、身が引き締まる。


 悪魔は根絶やしにしなければならない。


 人を食べる。人を襲う。人を騙す。悪魔は、人とは相容れない。悪魔には、罪悪感などなく、自分の欲望に忠実だ。食べたいから食べ、殺したいから殺す。騙してあざ笑うために騙す。


 僕は新人で、まだ先輩についていく事しかできなかったが、今回の仕事は、初めて自分だけで現場に行かせてもらえる事になった。…だだの人手不足だけれど。うれしいと同時に不安もある。


 悪魔は喰った数により強くなる。子供の姿をして記憶を改ざんし、人を殺して食べてきた悪魔がいたと、教科書の中に書いてあった。姿形に惑わされずに、一刻も早く退治することが僕たち神父の役割だと先生たちから、教えられた。…とはいえ、今まで先輩たちと退治した悪魔は、人の形すら保っていなかったが。熊と人との合体とか、狐と狸の真ん中みたいな生き物ばかり。…教科書にあった例など、百年前の事例らしい。…当てにはならないよな。


 畑の間の田舎道を通り、農民に麦わら帽子をとって挨拶をされながら孤児院に向かう。…うん。田舎だ。森に潜む悪魔もいるからな。完璧な人型の悪魔などここのところ出てきてはいないらしいし。この聖水があれば弱らせられるし。剣もある。…剣。ちょっぴり苦手。首を切り落とす感触が。無理矢理やらされたけど。弱らせて持ち帰ってもいいらしい。研究材料にすると、頭がよろし過ぎて、思考回路が吹っ飛んだ同期の顔が浮かぶ。

 鞄に入る折り畳みの檻をながめながら、ここで殺されるのと、実験材料にされるのはどちらがいいだろうかと考えてしまった。


 そして、出会ってしまった。のどかな孤児院で血に汚れたまま、それでも、美しいと思ってしまう銀髪の悪魔に、目を奪われた。

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