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シスターは顔面を蒼白にして、私をみる。祈るように胸元のブレスレットに手を伸ばし、太陽を模した飾りを震えながら、私の方に伸ばした。
なんの意味があるのだろう?
この孤児院で生活し、教会である敷地に暮らしてきた私に、そんな物が効くはずはない。太陽は私を殺す。だが、太陽を模した飾りには私を殺す効果はない。
血に浸って真っ赤に染まった手を、美味そうと思う心とおぞましいと思う心で二分している。
二つの心は、真っ向から正反対で、私の行動を邪魔する。喰いたい。吐きたい。美味しい。まずい。逃げなければ。このままここにいたい。…私の思考は、散り散りになり、指一本ですら動かす事が出来ない。…だだ、呆然と私を捕まえる手をみていた。
…そして私は、悪魔を退治させるために聖本堂に連れて行かれる事になる。よくわからないが、教会の上の組織らしい。行けば、どうなるのかはわからない。私に拒否権などあるはずはない。
暗く冷たい独房の中で、私はだだ待っている。力のある神父様を。私に引導を渡してくれるであろう聖なる人を。
地下にあるこの部屋は、何もない。陽の光が入らない部屋は、私には居心地がよく、水もトイレも食事もない。…なくても私には影響がない。その事に一番驚いたのだ。あの子の血を少し舐めただけ。だだそれだけなのに、私には、力があふれ、後ろに縛られた縄を簡単に引きちぎった。空腹が満たされて、幸福感に満たされて身体がふわふわしている。
そんな自分が、受け入れられない。前世の記憶が、異常だと訴えかける。
だが、今世の自分は、いいのだと訴えかける。喰う事は正常で、喰える物があるのならば、それは、私の性だと。…生きたいならば逃げろと訴えかける。
私は、引き裂かれる思考を持て余し、待っている。この独房が開かれて、私を連れていってくれる人を。眠る事さえできずに、目を見開きながら。




