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正しい吸血鬼のなり方  作者: 冬月 葉
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逃走編 1

 とりあえず、人里からは離れよう。人の側にいる事はあまりに危ない。私も他の人も。


 空腹に負けて噛みつきたくなるような吸血鬼。


 それが私。間違えようの無い私の本能。


 川から流れて、舟に助けられて、私をかついで家まで走ってくれた男の人と、慌てて玄関で私を受け取り素晴らしい連携プレイで、タライに入れてお湯を頭からかけて泥だらけのグッチャグッチャの濡れネズミのような私をグワッシグワッシと丸洗いしてくれた女の人とその様子をジッと見つめていた幼い女の子。


 善良そのものの家族。


 大丈夫?と声をかけてくれる。そんな人たちに喰らいつくような事はあってはならない。絶対に。


 急ぐ。一刻も早く離れなければならない。川から離れて林の中に。ここがどこなのか国名も地名も村名も何も知らない。…はい。ど阿呆ですね。もうちょっと学んでおけば〜。…過去をなげいても仕方がないので前に前に進もう。


 林から木々の中へ。森の中へ。


 歩く道は、人の入らない獣道。夜目がきくため木の根元や長い草などに足を取られる心配はないが、森に入る事への本能的な恐怖心はある。


 現代人にはちょいときついんじゃないかいよ?神様よ。


 神様に八つ当たりと文句と恨み言を言いながら、恐怖心を紛らわせる。


 虫が足元を通る。鳥が羽ばたく音がする。虫にも毒虫がいるから必ず杖をついて歩けと昔…たぶん前世で言われた気がする。…私に毒が効くかどうかはわからないけど。とりあえず杖をついて歩く。


 私は、少し油断していたのかもしれない。


 人が私にとって食糧であり敵。でも、森にいるのは、人ではなく私を食糧としてみているもの。


 カサリと草を踏む音。静まりかえった森の中で、その音は私の耳に届く。


 斜め後ろから聞こえた。すぐにふりかえる。


 光る瞳としなやかに獲物を狙う獣。…目があった。美しいと思う金色の瞳。チーターのように機能的な筋肉が全身をおおい、真っ黒な体毛は夜に溶け込むようだ。


 全身が粟立つ。これは危険反応。私が食糧。

 目を離した瞬間に、噛み殺される。それは確信。


 喰うものと喰われるものの緊張で空気が凍る。


 その空気を壊したのは、私。


 バサリと持っていた服を広げる。その音に反応して闇の中の獣が牙をむく。数メートルの距離など一瞬で飛び越え、私に噛みつくための牙がはっきり見えた。


 ここで、終わる。いいや、終わらせない。


 私の武器は、まだあるはず。私は、思い切り転がった。その鋭い牙の下に。


 死んでたまるか。死ぬまで抵抗を続けてやる。


 私は抵抗する。前世と同じように。


 


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