間話2
妹が死んだ。
らしい。飛行機事故で。遺体は無かった。その落ちた飛行機に乗った記録だけがある。遺品も無い。
どうして、死んだなんて信じられる?
帰って来ないだけ。いつもなら、疲れた〜とか言いながら、ぺったりと僕の胸にひっついてくるはずなのに。妹の不在に機嫌が悪くなる甘党の僕のために、ご当地おやつを買ってくる妹。一緒に食べようとひざに座ってゴロゴロと猫のように撫でろと甘えてくる。
いつもの通り必ず帰ってくる。
僕をおいていくはずかないから。
僕は、妹に懇願した。おいていかないでと。でも妹は、悲しそうにうれしそうに目を細めただけで、僕が欲しい答えを与えてはくれなかった。
こんなふうに、ちぎれてしまう。それを知っていたからなのか。
いくら待っても帰って来ない。
少しだけいる友人に、妹は僕に依存していると言われたが、依存しているのは僕の方なのに。
手をにぎり、にぎり返される幸せを。
抱きしめて背中にまわる腕の感触を。
笑いかけて笑い返してくれる幸せを。
ひとつひとつ教えてくれたのは、あの子だけだったのに。
僕の胸に空いた空白は、妹が帰って来なくなってから、日に日に大きく深くなる。
仕事ができなくなる。いや、仕事をしていた意味がなくなる。妹と暮らすためだけに仕事をしていたから。
食事がとれなくなる。食べても味がしない。妹が帰ってきた時に一緒に食べようと思うと食べなくても平気になった。
寝れなくなった。いつもの体温がない。猫のようにグリグリと頭をこすりつけて僕の胸に入り込む暖かさがない。シーツをかきむしってなんでと考えこむと、なおさら寝れなくなった。
そんな日が何日続いただろうか。部屋に閉じこもって、帰ってくるのをひたすら待つ。
意識が混濁していたのかもしれない。ガチャンと鍵を開けて部屋に入ってきた人が妹かもしれないと、玄関に向かう。やっと帰ってきた。遅かったね。心配した。僕にしか見せない気が抜けたふんにゃりとした笑顔を見せて。僕を安心させて。
足がもつれる。どうして。早くお帰りとむかえなければ。そうしないとむくれた顔をするから。
玄関に日の光が差し込んで、あれ今は何時だっけと思う。どうでもいい。帰ってきた。
壁に手をついて歩く。玄関の扉が閉まり光がさえぎられる。おかえりと言いたいのに喉の奥が小さくなっただけで、声が出ない。
かすむ目をこらして見えたのは、妹の顔ではなくて、数少ない友人と仕事仲間の顔だった。
スッと目の前が暗くなり、そのまま昏倒した…らしい。




