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あークラクラしてきた。貧血だな。足元がふらつく。だか、バクをつかんだ手だけは、離さない。バクは私の命綱。ぐっと手に力を込める。
「グェ!いや〜!離してぇ〜な!話して合おう!いや、話してどうにかなる?いや、無理やな?うん。…いや、ワテ関係ないやん?こんな所でやらんで外行ってやりさないぃ〜!」
バクが一人ツッコミしながら、喋り倒す。…元気だな。胸から流れてくる血が足を通り靴の中に入る。…そろそろやばそうだ。
「私を出して。」
バクに要求する。早く。こんな終わりを認めはしない。吸血鬼だろうが、混ざりものだろうがかまわない。私は私。
「はいはい!出します〜!」
バクが短い前足を動かそうとした。
「待て!混ざりものを出すな!契約不履行だ!」
カナヤがやめさせようとする。
「いや〜すんませんな〜、あの命あってのもんなんで、ワテもやりたないですけど〜。…この子ぉ、ほんまにワテを握り潰しそうで〜。…すんません!死にたないんで!」
平らな前足を勢いよく合わせた瞬間に、パンっと、破裂音が響き渡る。空間がよじれ丸まる。私は、目を閉じる事なく見つめる。目を閉じる事は、自分を危険にさらす。対処ができなければ、どうすることもできない。
ねじれた空間が閉じて開く。そうとしか言えない。一瞬の瞬きの間に私は、入る時の本棚の前に落ちた。…うん。落ちた。めっちゃお尻を打つ。痛い。お腹にバクを抱きかかえて離さない。
「出したよな〜!はよ離してぇ〜!」
「ごめん。ちょっとだけつきあって。」
それだけ言うと、一目散に逃げる。この傷で反撃などできない。逃げる事は自分を守ることにつながると、私は知っている。反撃など生きていなければできない。今は生き残る事だけを最優先に。心臓部を盾で守るようにバクを抱えて走り出す。
支部の中の人の足元をすり抜ける。足元というのは、攻撃するのが難しい場所。カナヤのような飛び道具では余計に。仲間達に刺さる可能性がある。それだけでカナヤは攻撃できない。
小さく幼い身体は逃げる際には有利になる。
「待て!」
待てと言われて待つ馬鹿はいないだろう。バクを片手につかんだまま、ナイフを胸に刺したまま私は外に飛び出した。
「いや〜!ワテの安眠場所〜!」
場違いにもバクの涙がキラキラ輝き、誘拐されてる感丸出しで、私は誘拐犯になり、それでもなんだか滑稽すぎて笑いを誘ってしまうバクのせいで、しまらない逃げ方になってしまった。




