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「カナヤ、お前何人殺してきた?」
ゆっくりと時間をかけてすり足で歩く。血だらけの顔には、歪んでいるとしか言えない相手を見下す笑みを浮かべる。その笑みに不愉快そうにまゆをしかめたカナヤ。…いいな。あははと声をあげて笑ってしまう。
「覚えているはずがないだろう。」
吐き捨てる言葉は、想定内でますます笑ってしまう。
「覚えていないほど、殺してきたんだぁ?」
上半身をカナヤに向けて傾ける。手のひらをパッと開いて、血で汚れた手を人差し指から折りたたんでいく。一人、二人、三人。
「神様に仕える方が、人殺し〜?」
その言葉に、眉間のしわを深くした。なぜそんな事を話さなければならないのかと。
「はぁ?混ざりもののくせによく言う。混ざりものは処分対象だ。何匹潰そうがかまってられるか。お前は、我々を食糧にしかみていない吸血鬼の混ざりもの。人を襲い傷つけるものだ。」
汚物について語るように話す。…ふーん。やっぱり、私は吸血鬼なんだ。まぁ、わかっていたけど。
だから、なんだ。
「吸血鬼は死ぬべきもので、私は吸血鬼。だから、殺されろと?ハハ!ふざけた冗談だな。」
おもいっきり笑ってやる。人の敵なら何をしても許されると?私が許さない。両親を殺した時と同じぐらい憎しみと怒りを込めて、カナヤを睨みつくる。身体から立ち昇るように殺気が走る。カナヤに向けて。
「私の心は何一つ見ようともしないで、私を殺すのか。私は、人として生きていきたいとずっと思ってきた。」
まぁ、ガンガン血が目の前にあったら我慢出来ずに舐めちゃいましたけど。そこは置いといて。
悲しさを表すように、視線を下にして目に涙を浮かべる。幼い子供の外見をめっちゃ利用する。
カナヤはうさんくさそうに顔をしかめるだけだが、後ろの神父様は、同情するように悲しそうな顔をしていた。
孤児院でシスターに泣いた姿。財布を拾って届けた姿。怪我をしてすぐに治った事に動揺した姿。ワンコ様やニャンコ様にメロメロだった姿。食事をしようとした姿。
私は、人としてちゃんと善性を示してきた…はず。あー毒を一気飲みとかは別にして。
綺麗なガラス細工しか見てこなかった新人神父様には、先輩の問答無用の人殺しは、どううつる?
幼い子供にナイフを突き刺す。それを平然とした顔で、なんのためらいもなく虫でも潰すようにやろうとする先輩の姿は。
神様を、先輩を、信じきった神父様にはどううつるのか?
今の私にできる嫌がらせは、このくらいだ。…少しぐらいは、ガラス細工に血をつけてやれたかな?
ぼたぼたと血を流しながら、そんな事を考えていた。




