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扉がいきなり開いた。思わず振り向くと、神父様と似た服を着た…女性が立っていた。
フードを深く被り表情は見えない。
「…カナヤ先輩?」
神父様が問いかける。私もカウンターで神父様が言っていたなと思い出す。
「サハヤ、相談したい事とはなんだ。」
女性にしては低く、男性にしては高い声。
「先輩。…場所をかえましょうか。ここでは。」
私に視線をチラリと向ける。あー。うん。私の事を相談したいのに、私がいたら邪魔だな。とりあえず他人事のように考えた。
「…あの。」
小さな声で言葉をつなげようとした瞬間に。
ナイフが、胸に刺さる。
「…はっ。」
吐き出した言葉とともに、血が唇から溢れ出した。なにが起こった?白いテーブルクロスに私の血がポタポタとたれて汚していく。刺さったナイフに手をやるとナイフの周りから、血が滲み出ている。
「っ!先輩!何を!」
神父様がいきなり起こった惨劇に声を荒げる。だか、それを起こした犯人は、フードを持ち上げて焼き上げた肉にフォークを刺したぐらい普通の顔をしていた。…これはなんて事のない当たり前の事のようで、その異常性に鳥肌が立つ。
「何って退治だろ。よくこんなのを中に入れたな。サハヤ。」
神父様を馬鹿にするような高圧的な言葉と声に、神父様が息をのむ。
刺さったナイフの痛みと熱さに耐えきれなくなり、椅子から崩れ落ちる。ガタンという音が遠くから聞こえてきた。
「サヤさん!」
神父様が私に駆け寄ってくる前に、カナヤが私の前にきた。私が顔を上げる前に、カナヤはナイフの刺さった胸を踏む。ズクリとナイフが深く身体の中に入り込む。目から血が出たのかと思うほど、目の前が赤く染まる。言葉は発せられる事なく、かはかはと浅い呼吸音が胸の傷口に響く。
「退治とは?なぜいきなりこんな手荒な真似を!」
神父様が私を踏みつける足をどかす。カナヤは、淡々とした声を荒げる事なく、料理の手順でも説明するように私の正体を言い切った。
「赤い瞳は魔族、悪魔の証。こいつは混ざりものだ。人の敵であり、人とは相入れないもの。」
冷えた視線が私を貫く。…混ざりもの。ナイフの切先がもっと深く貫通して、私を刺す。
「殺すべきものだ。これは。」
カナヤが、躊躇なく私を踏み躙った。




