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金色執事服ワンコ様に呼ばれて神父様のところに行った。…そしてまた私は、ワンコ様の肉球に負けた。手をつないでもらって向かう部屋がもっと遠くていいと願ってしまう私が憎い。
神父の待つ室内に入ると、食事が用意されていた。…本来ならば、うれしいはずのにおいが私にはそう感じない。焼きたてのパンのにおいも、煮込み料理のにおいも。食欲を掻き立てるにおいではないのだ。
無表情をもっと削ぎ落とした顔をした私を見た神父様は、ためらいながら言う。
「食べられますか?」
「…はい。」
それ以外の答えは無い。食べられるのは食べられるのだ。…おいしいと思えないだけで。この身体に必要が無い。栄養になっていないと無自覚にわかるのだ。…それでも、食べない事はおかしい事。
椅子をひいてくれる金色執事服ワンコ様にお礼を言って椅子に座れないので持ち上げてもらって席につく。…それだけで元気出た。食える私。
「食べられるものを探しましょう。君の味覚に合うものがあればいいのですが。」
テーブルの上には、色々な料理がそろっている。孤児院では見たことがない種類の食べ物。前世でも見た事がない料理ばかり。飲み物も色とりどり。
「こんなに…私、食べられません。」
食べ物を粗末にするのはいけない。孤児院でそう教わってきた。
「大丈夫ですよ。食べるのは一人ではないですし。」
神父様は金色執事服ワンコ様とメイド服ニャンコ様を見て微笑む。そしてワンコ様もニャンコ様も微笑みを返した。
私のためにこんなに用意をしてくれた。私は、悪魔のはずなのに。…優しい、そしてお人好し。本当に。
「…ありがとうございます。」
おいしいと思えない。それは事実。だけどこんなにうれしいと思えた食卓は、なかった。
だけど、料理をいただく前にお客様が来た。
私を、本当に、悪魔として殺すためのお客様が。




