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神父様が真剣な顔をして話をしようとしている。私の処遇に関する事だと思って私は、身体をこわばらせる。そこに、執事服ワンコ様のお声がかかると、私の身体がふやけてしまう気がする。お風呂に入った時のように、ふにゃふにゃになってしまうのだ。…キリッとしていたいのだが、もう条件反射かもしれない。…そして、黒猫メイド様のかわいい肉球で入れられるお茶の美味しさと、はにかむように微笑む黒猫メイド様が尊い。
ゆえに、神父様に意識が向かない。私は、かわいさに負けた。…だか、悔いは無い。
「…ルーター。リリ。すまないが、少し退室を。…この子が落ち着かないから。」
神父様が無情にもそんなセリフを言う。なんて殺生な!…いや、わかっているのだ。私は執事服ワンコ様と黒猫メイド様がいる限り、耳と目が必ず追いかけてしまうと!…ルーター様が執事服ワンコ様。黒猫メイド様がリリ様。うん。脳裏に焼き付けた。
神父様と出会って一番凛々しい表情をした。
その顔を見た神父様は、なんとも言えない顔をしていた。…まるで、果物が関西弁でしゃべり出したみたいな。…たとえがおかしいかも。いや、でもそんな感じですな。何をどうつっこんでいいかわからないみたいな。
「では失礼します。」
ルーター様が一礼して退室してしまう。リリ様もそれに続いて行ってしまった。…名残惜しげに視線を向けてしまう。パタンと扉が閉まる。…行ってしまわれた。
「…話をしてもいいかな?」
「はい。…あの、すみませんでした。ちょっぴり興奮してしまいまして、あの。」
「…ちょっぴり?」
「…いえ、大っ変、興奮してしまいまして。」
言い直す。弁解の余地無し。今更ながら、恥ずかしくなってきた。あれ?私、今まで、無表情で生きてきたのに。感情揺さぶられまくりですな。
「…なぜ?」
「なぜって、初めて会ったので。」
当たり前でしょう?初獣人様。興奮するなと言われる方がおかしい。
「駅にも、列車にもたくさんいたでしょう?」
…は?いた?えっ?頭の中が疑問符で埋め尽くされる。…私、日光除けのローブを深く被り、駅では人の靴を観察し、列車では窓に張りついていたって事は。
見逃したー!私のアホー!
顔を蒼白にして、口を丸く開け、椅子から崩れ落ちそうなほどショックを受けていると、神父様は、頭を抱えて小さくつぶやいた。
「……こんな子が、悪魔?…どう見ても動物好きなどこにでもいる子供だろ?」
ショックが大き過ぎて、私も頭を抱えて意味の無い言葉をつぶやきまくっていたので、神父様の言葉など聞こえていなかった。




