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前世の記憶は、暖かく優しいモノを選び再生されていたらしい。私に都合のいいモノ。辛い記憶は、ただ、しまわれていただけ。今、断片的に思い出した記憶は、痛みをともない私に犯した罪をみせつける。
私は、人を愛した。
その人が、兄だった。大切で大事で、触れて欲しくて、触れたくて。甘えて、甘えて欲しくて。
私は、罪を受け入れた。罪だと分かりながら止められなくて。自分の感情が理解できないのに、伸ばす手が兄に向かう。
幼く、愚かで、馬鹿馬鹿しい恋だった。
死んで生まれ変わっても、罪は続くのだろうか?
吸血鬼になった私は、一人で立たなくてはならない。どんなにさみしくても。どんなに恋しくても。
記憶がまたひとつよみがえったからか、神父様の神への盲信を聞いたせいか、涙が止まった。
「聖本堂に行き、僕が君を助けます。」
キラキラした目をした思い込みの激しい人。若い神父様にそう判断をくだした。…助けてくれるのはありがたい。でも、この人と共に居たいとは思えない。神を信じる力は強く、一途で、それゆえに怖い。…神父様の信じる神は、もしかしたら神をかたどった聖本堂のお偉いさんだったら。その人が私を否定したら、この思い込みの激しい人はどうゆう判断をするのか。神を語ったお偉いさんの言葉を丸呑みして、私に剣を向けるかもしれない。そんなリスキーな賭けに出る気は無い。
だが、紐を切って逃げられるほどに、私は足が早くない。断言しよう。私は、五歩で捕まる自信がある。幼女の足は、長くない!
さっさと聖本堂に行って、さっさと悪魔か、人かは判断をお願いしよう。悪魔だったら、さっさと退治されよう。…一度死んだ身だもの。生きたいという欲求を捨てる事は難しくないはず。
…そしてもう一度、兄が生きている世界に生まれ変わりたい。私の身勝手な欲は、死んでも治らないらしい。




