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気持ち悪い。自分自身が。だとしたら、私を抱き上げてくれている人は、もっと気持ち悪いだろう。
だって、人ではないモノを抱き上げているのだから。
触れられない。私。怖い。カタカタと震える手を隠そうと両手を祈るように組む。
「…下ろして下さい。…お願いします。」
病気のように移る訳が無いのに、それでも私に触れてしまえばどこか異常が移ってしまう気がして、怖くて悲しい。孤児院で怪我をすることなど無かった。私は、自分の事をここまで…化け物だと思わなかった。
涙が、出るかと思ったが、出なかった。
「下ろして下さい。…お願いです。」
神父様の嫌悪に染まった顔を見たくなかった。
「大丈夫です。大丈夫。」
神父様ののんびりとした声がした。私は、驚いて顔を上げて神父様の顔を見上げてしまう。
「君のせいではないのでしょう?」
言われた言葉にとっさに出たのは反論で。
「私は、血が欲しくて!身体も…だって、治って…おかしい。私。私が!悪魔だって!」
顔が歪む。私がおかしくて、異常で、悪魔で退治されるべきモノのはずなのに。なんで。
「ごめん。僕も混乱していた。君を悪魔だと思っていた。…でも、君も混乱していたんだね。自分の身体に。…君自身も血を欲する理由が、わからなかった。…そうだろう?」
そう。私にもわからなかった。なぜ、血が飲みたいと思うのか。ただ、本能のおもむくままに血を欲した。ただ、私は、生きたかっただけ。
うなずく事さえできずに、呆然と神父様の顔を見上げていた。
「大丈夫。君が悪い訳じゃない。」
静かに、優しく、きちんと伝わるようにはっきりと言葉を話す。
「生まれてきた事を悔やまないで。」
「君は、ここに生まれてきた事に意味があるはずです。神様は、必要のない命を育まない。必ず、君を必要とする人がいる。」
視線を合わせて、ただ誠実に、心から言ってくれている。
その言葉に、涙が一滴こぼれ落ちた。




