25
ヒックヒックとしゃっくりが止まらない。喉が詰まって呼吸が苦しい。泣いている事が恥ずかしくて、涙を隠そうと擦り続ける頬が痛い。
「ごめんなさい。泣かないで。本当にごめんなさい。」
私を抱き上げたまま、神父様がめっちゃ謝っている。だが、ひゃっくりの止まらない私の喉は、言葉を発せられない。えぐえぐと泣き続けるだけなのだ。
見かねた神父様は、私の頭をそろそろと不器用すぎる手つきで撫でた。いや、撫でられず触ると表現するのが正しい手つきだ。
それでも、血を飲んでしまったあの子以外に触れられた経験がない私の涙を止めるには十分だった。
「痛かったね。本当にごめん。」
子供だし血を吸う化け物に、こんなに真摯に謝られるとは思わなかった。驚いて涙腺が少しずつ閉まるのがわかる。
「うぅ…あ、大丈夫…です。」
また、泣いてしまった恥ずかしさが再来し、顔と耳が沸騰したように赤く熱を持っていく。…不細工なぐちゃぐちゃ顔をしているのだろうと予測がつく。恥ずかしくて、神父様の目が見れない。
「あの、もう大丈夫ですから降ろしてください。」
至近距離で泣いた顔を見られる事に耐えられない。短い手を伸ばして神父様の肩を押す。
「ダメです。怪我しているでしょう。」
顔面スライディングし、鼻の頭やら、膝やら、手の平やら前面的に擦りむいた。…はずだった。
痛くない。どこも。鼻の頭も、膝も、手の平も。どこも痛くない。泣いていたから気づかなかった。痛いはずの怪我が、すでに無い事に。…血の一滴さえ服に付いていない事に。
涙で赤く腫れた頬から、血の気が引く。
怪我が、治る。それは、うれしい事のようで、人としてあり得ない事。…異常な事。人では、無い事の証明。
抱き上げた体勢のままの神父様が、私の顔色の変化に気づく。そして、膝、手の平、顔を確認していく。神父様の表情が、こわばっていく。
神父様の私を抱き上げた腕が、小さく震えた。
私は、違う意味で顔を上げられなくなった。




