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正しい吸血鬼のなり方  作者: 冬月 葉
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 神父様と列車を降りる。…私は、どうなるのだろう。紐で結ばれた神父様の手首をながめる。


 この手首を切れば、小さな私の身体は、人混みの中に逃げられる。


 仄暗く、血生臭い考えが、脳裏を埋め尽くす。


 その考えを前世の私は嫌悪する。人を傷つけることは、悪い事だと。


 この神父様は、職務を全うしようとしているだけ。私を連れて聖本堂に行くのは、正しいのだ。そう納得させて神父様の後を追う。


 だが、ちょっと待って。人混みに慣れていない子供の私を連れて歩くなら、歩くスピードを考えて欲しい。人のふくろはぎを視点にしている私には、神父様の歩くスピードは早すぎる。最初の駅までの田舎道では、私が小走りをしていたら、歩くスピードを落としてくれた。だが、孤児院育ち、外で運動したことがない、温室育ちの子供の足を過信してはいけない。お願い、ちょっとでいいから、振り返って欲しい。


 もつれまくった、私の足は限界に達しようとしていた。


 そして、ついに、人の靴につまずき顔面からスライディングした。


 さらに、紐で結ばれた神父様まで巻き込み、神父様のお尻が、私の頭に乗ってしまう悲劇…というか喜劇か。ムギュリとつぶれた私は、むぐむくと虫のように手足を動かすだけ。


 「だ、大丈夫ですか!」


 神父様が、慌てて私の上からどいてくれた。…ホームの床とお尻に挟まれた私は、涙目で神父様を見てた。…顔面が痛い。紐が食い込んだ手首が痛い。ホームの床にこすった膝が痛い。


 「うぅ…。」


 痛みに引きずられて、涙で視界が潤む。…私が、転んだのがいけないとわかっている。でも、痛い。神父様もひどい。シスターに泣きついた後だからか、涙腺が緩んでいる。


 前世の大人の私は、今世の子供の感情に負けた。


 「うわーん!!」


 痛みと、人前で転んだ恥ずかしさと、何かわからない悲しさから私は、声をあげて泣き出してしまった。


 神父様が、私を抱き上げてホームから逃げるまで約五分。私が泣き止むまで約十分。


 私という子供を泣かせたと非難の目にさらされて、神父様も涙目だったことに気づく事はなかった。


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