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私に、チョロチョロされると困る。…そりゃあ、そうだ。聖本堂まで、連行する人。私、連行される人。逃げられたら、たぶん、責任取らされるでしよう。上司にも報告済みですし。
神父様の手首と私の手首を、白い紐で結ぶことになった。…なんか、首輪を付けらた犬…に思えてきた。…ちょっぴり、悲しい。
列車に、入る前から、こんな事になろうとは。ため息をついていると、知らないお姉さんが、私の前に立つ。神父様の後ろに隠れようとしたが、間に合わず…えっ。何?私、何かしたかな?
「…あげるわ。ごめんね。」
お姉さんのにぎった拳の中を開くと、紙で包まれた飴玉がボロボロと手のひらに落ちてきた。前世の飴玉よりも小さくてデコボコしている。思わず、顔を上げてしまい、フードが後ろにずれる。
まゆを下げ、綺麗に塗られた唇を歪ませて、後悔しているとはっきりわかる顔。
「助けてあげられなかったから。」
その一言が、すごく、うれしかった。財布を届けた事は正しいことをしたと、私は思えた。
それを、きちんと認められた気がした。
「ありがとうございます。」
私は、かすれた声でつぶやいた。聞き取れなかったかも、知れない。でも、お礼だけは言いたかった。
ひとつ、否定されて、ひとつ、認められた。
…あの男の人を、攻撃しなくてよかった。今になって、手が震えてる。私、頭に血がのぼった?飲んだ血が、身体の内側を、食い破るみたいになんでもできるような感覚が頭に浮かび、実行に移そうとしていた。
ダメ。私。ダメ。
キツく、指先を握りしめて思う。
あのまま、衝動に任せて、理性を手放していたら。私は。
…私は、自分を信用してはいけない。私は、自分が怖くて、仕方がないのだ。




