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この世界で、幼い子供と歩く際は手をつながなければならないらしい。
…すまん。若い神父様。今世の私は、まだ幼い子供。駅のような人混みの中では無力だ。
さびれた教会の孤児院を出る。…忘れていたが、私、太陽の光浴びたら死ぬ。聖本堂に行く前に、私死ぬわ。
人の生活は、太陽と共にある。日の光を浴びて起き、日の光が沈むと共に寝る。一部の人々は、ランプや魔道具などを使い、夜にも仕事をするがこんな貧乏孤児院ではそんな便利なモノなどは無い。
子供たちは、十歳から食糧を取るために森や川に行き遊びながら、若い(比較的)シスターから生きていく方法を教えてもらう。
十歳より下の子供は、はっきり言って放置気味なのだ。シスターも日々の仕事を放り出す訳にもいかず、八歳、九歳の子供が世話をしている状態。私はみんな(例外一人)に怯えられていたから、外に出る事なく過ごせていた…が。
こんな落とし穴があるとは!
朝日がサンサンと差し込む穏やかな冬の日。そんな日が、私の命日になろうとは。遠い目をしてたそがれた私に、神父様は、入り口で日の光を浴びながら振り向き、早く行こうと急かす。…私の無表情はここでも活躍していたらしい。あー。行くか。
一歩、踏み出そうとした背中にシスターの声がかかった。
「待ってください。この子は皮膚が弱くて、これを着せてあげてください。」
真っ黒なローブを私に持ってきてくれた。私には大きくて指先まで隠れてしまう。…シスター。グッジョブ!ありがとうございます!心の中で拍手喝采を送り、口下手でかすれた声でお礼を言って。
こうして、私は初めての外に出られたのだ。
そして、初めての駅のホームにて、初めての人混みの中で、もみくちゃにされ、神父様と初めての接触をしている最中です。…すまん。神父様。私の手をにぎる手がかすかに震えている事が、私の罪悪感をあおる。ホームで、列車を待つ間の私と神父様のぎこちなさは、他に類をみない緊張感の中にあった。
心の中で謝る事しかできない私を許して。




