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私はどうやら、退治できない生き物らしい。
聖水を美味しそうに舐める。これは悪魔としてはありえない事らしい。…まぁ、それはそうだよな。もう一本聖水をもらったけど、私が一気飲みしてしまったから。…だって、飢えていたんだ。甘いと感じるモノなんて、血以外になかったし。
血は、コッテリしっかりした滑らかさのある甘さで、口の中にふくんでいたいような美味しさ。
聖水は、甘さの中にフルーティさがあり、口に入ればゴックゴックと飲み干してしまいたい美味しさ。
うむ。どちらも甲乙つけがたい。
…と、味比べしている場合ではなかったな。
聖水を私に渡した姿のまま、聖水を呑み干す私を呆然とみている男の人は、ハッと我にかえって私の肩を掴んだ。
「君は…聖水を。」
そこから先は、言葉が続かなかったらしく、私がにぎっている聖水の瓶を虫でも飲み干したような顔でみてきた。…私もびっくりだ。毒が食い物なんて、そして美味い。男の人のマントからウエストポーチがチラついている。その中から聖水が。…もう一本もらえないかなぁ。今度はちびちび味わいたい。と、酒飲みみたいな考えが顔に出ていたのか、男の人が、聖水を私にくれた。…いいのか?
最初にかけられた聖水は、空よりも青色
二本目は、海の深いところの藍色。
三本目は、夜の闇のような黒色。
三本目、やばいんじゃない。だって、この色って、あれしかないじゃん。私が、こよなく愛していたあの飲み物。
私は、はやる心を抑えつつ、手は抑えられずにもどかしげにコルクを抜く。
一口飲んだ。この喉の痺れは。甘いのに、深いこの味は。うるうると瞳が濡れていくのは、嬉し涙だ。うん。やっぱり。
ここに生きて初めての、コーラだった。




