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幕間4 彼女の心は闇の中に 過去に囚われたまま

 20XX/12/16 1700


「清雅市南東区内のホテル「ヨゾラヲナガメルヲトメ」5階10号室の映像出力端末に該当データを送信しました。ニュース形式での出力に問題なし、彼等には緊急速報としか認識されません。亜細亜(アジア)州、中国の清雅関連会社の監視カメラへのハッキング及びデータ改竄(かいざん)完了、探知された形跡もありません」


 真っ暗な空間に、私の声が木霊した。


「ありがとう」


 彼女は私に礼を述べたが、その顔は酷く暗い。だが、それも仕方のない話。まだこの周辺が発展する以前、彼女が全てに絶望する以前は外を出歩く事もあったのだが、と昔の記録を呼び起こす。


 もうどれ位だろうか。この暗い空間だけを拠り所とするようになったのは。出来れば私も何かしてあげられたら、そう思う事は何度もあった。彼女が目覚めて以降もう何度となく。だが、それは叶わない。私にはその自由がない。何より、私では彼女を理解してあげる事すら出来ない。


 何に苦しみ、どう寄り添えば良いか。様々な知識を得たが、結局「正解がない」という以外に何も分からなかった。私も、彼女と同じように、闇の中を彷徨っている。


「何故このような事を?確かにこの映像を見れば旗艦アマテラスから来たあのスサノヲは高い確率で行動を開始するでしょう。現に通信を行い、そこに向かおうとしていました。地球人の男と宇宙から来た式守らしき女性、この2名に何を求めておられるのですか?」


「何故?……何故だろうな、自分でもわからないのだ」


 私の問いかけに彼女は随分と曖昧な返答を返した。その様子を窺うが彼女は不安定な思考に襲われながらも、確かな意志で2人の逃避行を見守る道を選んだ。


「何故だろうか、どうしてだろうか……何かをせずにはいられなかった。私は何を願っているのだろうか、何を重ねているのだろうか。重ねる……?」


 彼女は自問自答し続ける。私はその様子を見守る事しか出来ない。そうか、彼女は――ならば私も願おう、そして可能な限り彼女の意志に寄り添おう。監視カメラは逃避行を続ける2人の姿を追いその映像をこの部屋に向けて送る。そして彼女は2人の逃避行を追う映像とは別、もう一つの映像も見つめている。


「策……らう、君……う、助…………君……理……必……力……つ……」


 彼女は破損した記録を眺める、途切れた言葉の断片と辛うじて男と判別出来る何者か。それを見ているとどうしてか何かをしないといけない衝動に襲われている様子が伝わる。何かをしなければならない。だが、その「何か」が分からない。迷いを重ねる彼女の姿はとても儚く、それ故に美しかった。

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