第八話「宿命の再会」7
浩二君と研二君と三人での話し合いを終えて、居候先の水原家に帰った私は力尽きるようにベッドに倒れ込んだ。
暑さのせいだけではない、身体から力が抜けてしまっているような脱力感。
先程まで出来ていた思考もぼんやりとしてきて代わりに睡魔が襲ってくる。
今日の戦闘で魔力を使い尽くしてしまい、身体が悲鳴を上げているのだ。
精神エネルギーと関係性の深い魔力を消耗すると集中力を失い理性的な判断をするのも難しくなる。身体的な動作を起こすのに必要な身体エネルギーと精神エネルギーの和は一定であるため、今は大人しく身体を休めるのが使い過ぎた魔力を戻すためにも先決に違いない。
携帯端末から手を離し、黒のワンピースを脱ぎ捨てて下着姿になると、枕に頭を乗せてタオルケットを被り瞳を閉じた。
緊張状態から解放され、穏やかな眠りへといざなわれていく。
ふと頭の中で静止画として記録された、あの赤い瞳をした褐色肌の綺麗な女性と研二君が睨み合う姿が思い出された。
あまり冷淡な憎しみの炎を宿らせた瞳。
私はあんな瞳が出来る程に、人を憎いと思ったことはない。
でも、二人は魂ごと復讐に駆り出されているような、そんな底知れない恐怖を与える空気を纏っていた。
あの憎しみの炎に飲み込まれてはならない。
戦いの中でそれだけはずっと感じていた。
どれだけ嫌なことがあって、辛いことがあってあれほどの復讐心に囚われてしまったのか、想像するだけで嫌になる。
きっと、長い年月をかけて今に至ってしまったことだけは分かる。
このままではまた避けることの出来ない死闘が繰り返されてしまうだろう。
私は生き残るために、戦いを終わらせるために新たな一歩を踏み出さなければならない。
「浩二君……どうして人はこんな悲しい出会いしか出来ないんだろうね……」
遠ざかっていく意識の中で私は呟く。
人間同士で殺し合うなんて間違ってる。
そう思っていたとしても、言葉にしたとしても、二人の覚悟は命よりも重く宿命によって定められているかのように揺るぎないものだった。
この戦いはそう簡単に避けられるものでも、終わらせるものでもない。
私はこの身に染みついた恐怖心を紛らわすように身体を丸めたまま、眠りに落ちていった。




