第四話「14少女漂流記上映会」6
「知枝さん……それはそうと、魔女の力を行使する準備は整っているのかしら?」
羽佐奈は直接会った時に聞いてみようと思っていたことをぶつけた。
上映中にもかかわらず、容赦のなくぶつけられる重大な質問。
答えを用意していた知枝は焦ることなく口を開いた。
「はい、魔法使い候補には今回の上映会にも参加してもらっています。
ゴーストや魔法使いについて知ってもらうのにこれ以上ない素材はありませんから。
羽佐奈さんなら、見ただけで対象者が誰かお見通しだと思いますが。
既に私の魔力を込めた宝石も渡しています。マギカドライブを発動させないといけないような戦いがこの先来ないことを祈ってはいますが」
「そう……用意周到なのは黒江譲りかしらね。
黒江から魔女の力を受け継いだ貴方は特別よ。
通常の魔法使いは一人につき一つの霊魂しか身体に取り込むことが出来ないけど、魔女は違う。複数体の霊魂を身体に秘めて飼いならすことが出来る。
この特性があるおかげで、他の人に霊魂を移して新たな眷属を増やすことが出来るけど、そのせいで優秀な魔法使いでないと魔女にはなれないのよね」
アリスの神託。かつて黒江が選んだ魔女へと至る道。
その道を引き継いだ知枝にはそれに見合うだけの才を既に有している。
「でも、羽佐奈さんは規格外ですね。
自身の眷属を増やしながら、最強の魔法使いであり続けている。
信じられない話ですよ」
「私のことはいいじゃない、これでも陰で苦労を重ねているんだから。
正直、家族を魔法使いに覚醒させるのは友人を覚醒させるよりも簡単なことよ。
それより儀式場所については考えてあるのかしら?
初めて力を行使するなら、霊脈としての効力を持つ環境を選ぶのが最初は正解だと思うけど」
「一応、調べてはいるんです。
現在の神代神社は霊力が弱まっているので最適とは言えなくて。
井野原の滝を選択することになると思います」
他の霊魂を体内に宿していない一般人に対して、半霊半人の魔法使いに覚醒されるための儀式を施すためには、互いのシンクロ率を上昇させるために一定の魔力行使が必要になる。
そのため、霊力の宿る土地の力を借りるのが身体的の負担を考えると一般的とされている。
知枝は複数人の同時覚醒を考えているため、舞原市内で霊脈の宿る場所に目星をつけていたのだった。
「厄災の発端とも言われている悪魔の壺が現在も保管されている井野原の滝を選ぶなんて、14少女漂流記と繋がっていて、それはまた因縁深いわね……。
Xデーがいつになるのか、不謹慎かもしれないけど楽しみだわ。
アリスの導きがあらんことを」
羽佐奈は舞原市の新たな魔女が着実に動き出していることを実感し、未来は明るいと笑みを浮かべた。
「ごめんなさいね、本当はもう少しこの街に留まって見届けたいのだけど、私の街もどうもきな臭くて。私も巻き込まれそうなのよね」
「なるほど……猟奇殺人事件。
ゴースト絡みでしたか」
知枝は今朝のニュースで目にした都内で発生している猟奇殺人事件の報道を思い出した。血の抜かれた不自然な遺体。
想像するだけでも恐ろしい行為が犯人によって行われたことが推測できた。
「まだフィフティフィフティってところね。
こっちに厄介事が舞い込んで来ないことを祈るけど。
都知事選候補への襲撃事件の犯人が捕まってすぐにこの気味の悪い事件だから。次の被害者を出さないために、先行して他のメンバーが既に動き出しているわ」
「流石ですね……分かりました。
お互い頑張りましょう、アリスの導きがあらんことを」
都内で探偵事務所を構えながら街を守る為に尽力している羽佐奈。
羽佐奈にも事情があることを知った知枝はこれ以上、戦力として頼るわけにはいかないと気持ちを新たにした。




