第二話「アリスプロジェクト」2
「へぇ……二人が信じあっているのが伝わって来て、お姉ちゃん胸がいっぱいだわ……。
千歳さんはこれからもずっとフィギュアスケーターとして選手活動をしていくの?」
千歳さんとしての姿で会う機会はそう多くない。私はアイススケーター事情に詳しくないので、改めて聞いてみることにした。
「そうですね……今はオリンピックを目指しているので、先の展望まであるわけではないですが、やれるところまではやってみたいと思っています」
オリンピック出場か……私のような素人からは夢のまた夢すぎて想像できないが、はっきりとした目標があることはいいことだと思った。
それから、千歳さんは雑誌を手にしながら実に充実した表情で色んな事を教えてくれた。
艶のある乙女の肌をして妖精のように小柄で、無駄のない筋肉の付いたスラッとした体格の千歳さん。
氷上を滑るフィギュアスケーターとしての千歳さんの姿を何度も見てきたが、キラキラとした煌びやかなドレスを身に纏い、優雅に踊る姿は映画のヒロインのようで、言葉を失うほどの美しさだ。
それは見ているだけで憧れを抱くほどに氷上の舞台に相応しく、何物にも代えがたい神聖な空気を感じさせてくれる。
そんな千歳さんの一番の目標はやっぱりオリンピックに出場することだという。
スキーやスケートなど、ウィンタースポーツ好きの父親とスポーツメーカーで働いている母親の影響が大きいという話しだけど、四歳の頃からスケートリンクで滑り始め、幼い頃から過酷な練習を続けてきたと語る千歳さん。
音楽に合わせて踊るフィギュアスケートはスピードスケートのように単純にいかに素早く氷上の上を走る競技と異なり、様々なテクニックやバランス感覚、優れた技術が必要になる。
そのため、氷上の上でのトレーニングに加えて、バレエやダンスの練習を週に二、三回はしてきたという。
中学生になった頃には頭角を現し、大会で好成績を収めている千歳さんは、今は身体も大切にしながら過ごしている。
厳しい練習ばかりではなく、学園にいる時間も良い経験になると語る千歳さんは立派なスポーツ選手の一人に思えた。
オリンピックに一度でも出場すればアイスショーに出演することで安定した収入を得られるのもフィギュアの世界の特徴でもあるため、今努力し続けることの大切さを千歳さんはよく理解しているようだった。
そんな千歳さんの話しを聞いているだけで時間は過ぎていく。
私のことはよく話していても、光の将来について会話したことはほとんどなく、将来に向けて考えていく時期なのだと改めて実感させられた。
今度、光に聞いてみるのもいいかもしれない。意外な一面が見られるかもしれない。
私はこのまま時間だけが過ぎて行ってはならないと思い、一度席を外して宝石箱を取りに自室に戻った。




