2,000文字以内で振り返る魔法使いと繋がる世界EP3前編~Clover destiny~
<イントロダクション>
――西暦2059年
生き別れになった三つ子の魂が18年の時を経て、今、巡り合う。
それは数奇な運命に導かれた、少年少女たちの長い一年のほんの始まりだった。
凛翔学園三年生、幼馴染三人組の一人、樋坂浩二、生き別れとなった三つ子の長女、稗田知枝のダブル主人公で繰り広げられる、隠された厄災の真実に迫る一大青春群像劇。
<魔法使いと繋がる世界EP3前編~Clover destiny~>
”取り返しのつかない一つの過ちが、あるはずだった未来を奪っていく。そして、それぞれの想いは一つの愛の形へと繋がっていく”
“真奈の想いを裏切らないように、その優しい心に恥じないように生きていこうと私達は誓った”
「マナ分かるよ、ちえおねえちゃんは“おにいちゃんのことが好きなんだね”」
三クラスによる合同演劇発表会後、樋坂浩二と樋坂真奈が二人で暮らす樋坂家にやってきた稗田知枝は魔法使いになりたい真奈への魔法使い授業の際に樋坂浩二への恋心に気付かされる。
一方、浩二の幼馴染としてずっと真奈の親代わりをしてきた永弥音唯花はそれを偶然に耳にしてしまい浩二への想いを改めて募らせる。
そして、浩二を巡る三角関係の中で知枝に先を越されてはならないと告白する決意を固めた唯花は真奈と浩二をプライベートライブに誘いステージに立つ。
しかし、ライブ途中で真奈が倒れてしまい告白は失敗に終わる。
病院に搬送され、真奈が目覚める時を祈る中、現れた知枝は魔法使いの力を解放させ、真奈を目覚めさせるのだった。
真奈が快方へと向かう中、知枝は真奈が倒れた原因に気付き、唯花と対面する。そして、唯花にとって受け入れがたい事の真相を告げるのだった。
「真奈ちゃんは、近しい人の愛の深さに感応して魔力を増大させるのです。
”想いの力”と言ってもいいでしょう。
魔力が増大し、真奈ちゃんの魔力許容量である器から溢れれば溢れるほど、真奈ちゃんは溢れた魔力によって自分を傷つけてしまうのです」
唯花の想いの力によって真奈の魔力許容量を超えて暴走を引き起こしたことを告げる知枝。
そんなことは信じられないと激昂する唯花だったが、病院から飛び出し、家に帰る途中に出会った、謎の少年タナトスの言葉によって四年前の香港火災事故の記憶が呼び覚まされてしまう。
そこで命を繋ぎ止めるために稗田黒江によって自分が知枝と同じ半霊半人の魔法使いに覚醒させられていたことを思い出す。
人智を超えた力を行使できる超能力に目覚め、既に半分人間でなくなった自分は真奈と一緒にはいられないと悟った唯花はビルの屋上から飛び降り自殺しようと試みるが間一髪のところで浩二が現れ、唯花は踏みとどまるのだった。
浩二は唯花が自殺未遂に至った原因が知枝の言葉にあると知り、知枝を呼び出して怒りをぶつけてしまい、知枝とも仲違いをしてしまう。
ショックのあまりに寝込んでしまい、バーチャルアイドル”天海聖華”の活動も休止することになった唯花。そんな唯花の下にもう一人の幼馴染、内藤医院院長の息子である内藤達也がやって来て看病をしてもらう。だが、その達也もまた唯花への恋心をしたためているのだった。
真奈から命の恩人である知枝と仲直りをしてほしいと訴えられた浩二は、知枝の三つ子の姉弟、水原光の協力を得て合同誕生日パーティーを開催。誕生日を迎えた真奈と知枝を祝いながら、仲直りを果たすのだった。
達也の看病の甲斐もあり、京都修学旅行に参加できることになった唯花。
しかし、唯花は修学旅行の途中に達也から告白をされ激しい葛藤の中で断ってしまう。
その日の夜、唯花は浩二から修学旅行中に開かれる舞台演劇、”震災のピアニスト”リバイバル公演の終盤で知枝にサプライズ告白をすることを告げられてしまい、積もりに積もった恋心も含めて、全てが終わってしまうことに気付かされるのだった。
そして迎えた京都修学旅行最終日前日の夜、浩二や知枝たちが所属する演劇クラスによる舞台演劇”震災のピアニスト”リバイバル公演の中で浩二は役を演じながら知枝に愛の告白を告げ、混乱の最中舞台演劇は閉幕。知枝は返事を言葉に出来ないまでも、浩二の想いを知るのだった。
自分がアイドルであることを隠し続け、アイドルであるから達也とは付き合えないと突き放した唯花。浩二への想いも届くことなく、失意に暮れる唯花はそれでも立ちあがろうと、留年をして修学旅行に行けなかった水原舞の下へと向かう。
「舞、ただいまって言ってもいいかな?」
創作料理店”ファミリア”では先輩後輩の関係である舞の存在は唯花にとって想像以上に大きいものだった。
アイドル活動を含めて自分を慕ってくれる同い年の後輩、舞にお土産を渡し、アイドル活動を再開することを伝える唯花。
「唯花先輩……本物だ……。
帰って来て、くれたんですね……。
せんぱーーーーーーいいいぃ!!!!!!」
修学旅行に行けなかった寂しさから想いを爆発させる舞。
「色々浩二のこと、もう聞いてるかもしれないけど……お願い……。
"浩二のことを恨まないであげて、そうしてくれないと、私はもっと自分のことを嫌いになってしまうから"
迷惑……かけたくないの、私のせいで足を引っ張りたくないから。
それに浩二は今も、私の分も真奈ちゃんの面倒を見て、頑張ってるから。
だからね……私は浩二にこれでも感謝してるんだ」
そんな優しい舞に向けて、ただ愛する浩二を恨まないでほしいと涙ながらに唯花は懇願するのだった。