第96話 火牛攻め
ここは山の麓にあるモンゴル魔族の調教施設。
ここでワイバーンの子供たちは、将来竜騎兵にするための調教を受けていた。
つまり、魔族たちは最初から子供たちを返すつもりはなかったのだ。
また、この施設にいる子供の奪還を恐れて、3000の魔族兵を詰めさせ、ワイバーン飛来用の対空魔法兵器を配置していた。
また、地上からの攻撃に対しても魔法障壁を張り、内部に侵入できないように展開してある。
ただ一つ、この施設の弱点と言えば、あまりに完璧に防御された施設なので、魔族兵の警戒心が薄くなっていることである。
今夜もいつものように居眠りをしながら見張る魔族兵たち。
そんななか、上空から雁の鳴き声が聞こえてきた。
「最近やけに雁の姿を見るな?」
「ちょうど渡の時期なのだろう?」
魔族兵がこんな会話をしていると、正面から地響きのような音が聞こえてきた。
「なんだ、なんだ!」
守衛の兵が慌て始めると、魔法兵から信じられない言葉が聞こえてきた。
「闇の魔法障壁が妨害を受けて展開できない!」
その瞬間、正面から無数の明かりが見えてきた
「てっ敵襲だ!」
慌てて叫ぶ守衛をたいまつの明かりが次々と空へ放り投げる!
たいまつの群れはそのまま柵を飛び越え施設内になだれ込んだ。
広い施設を所狭しと走り回る松明の群れ。
松明の火は、住居や施設ののゲルに次々と引火して、あちこちで火災が発生した。
消火と、奇襲の迎撃に慌てふためく魔族兵たち。
それを指揮する兵を、松明に乗った武将たちが次々と斬り倒していく。
頼りの対空魔法兵器も地上部隊の攻撃により、一度も火を噴くことなく鹵獲されてしまった。
「このままでは、『ジャムカ』様に我々が処刑されてしまう!」
「ワイバーンを連れて撤退するぞ!」
そう話した司令官は急いで調教施設に向かう。
調教施設が見えたとき、2人の人間が門の前に立っていた。
「誰だ貴様らは?!」
慌てて質問する司令官に、二人は自己紹介をする。
「やあやあ、我こそはラビット王国の源義経なり!閻魔様に九郎に殺されたと伝えておけ!」
「俺の名前はリチャード・ボング!息子を攫った罪は慈悲深い神であろうと決して許しはしない!」
そう言うと二人は半獣化し、司令官たちに襲い掛かる!
ディックは人型の姿で背に翼を生やし、宙に舞いながら双方に持ったマシンガンでファイヤーボール弾をばらまく。
「ぐわー!」「ぎゃー!」
魔族兵の悲鳴の中、義経は2本の刀で次々と魔族兵を打倒していく。
「わかった!降参だ!もうやめてくれ!」
司令官の悲痛な声を聞き義経は大声で叫ぶ。
「皆の者!敵司令官は降伏した!」
「抵抗しないものは降伏とみなし攻撃を行うな!」
こうして、深夜に始まった戦いは夜も明けきらぬうちに決着した。




