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第177話 丹陽城攻略

首都郢での、荊州北部侵攻が決定し、準備を行っている頃、孫策率いる呉方面軍は、既に会稽かいけいを落とし、建業けんぎょう丹陽たんようの攻略に掛かっていた。


「来たぞ!アリの奴らが押し寄せてきた!」


丹陽の城では、各地から退却してきた魔族兵2万5千が守っているが、呉軍1万2千の兵団を見て、皆震え上がっていた」


複数個所から、呉軍の攻城部隊による投石機で、城壁に攻撃を行いつつ、兵団は前進する。


先頭を走る騎兵団は、城壁の側面を走りだし、城壁から降り注ぐ矢を躱す。


そちらに意識を集中している間に、アリ兵が城壁にはしごを掛け、盾を頭に付けて登り始めた。


「そっちの騎兵はいい!登ってくるアリの兵に射掛けろ!」


城兵は騎兵への攻撃をやめ、登城するアリに一斉に射掛け、侵攻を阻む。


騎兵団はそのまま鉤縄かぎなわを城壁の頂上へ投げ、縄をつたって城壁を一気に駆け上る。


「しまった!騎兵団が上がってくるぞ!」


気付いた弓兵は慌てて騎兵に向き直るが、時すでに遅し。


鈴の音と共に、騎兵団の男たちが次々と上に辿り着き、取り巻く兵を一瞬で倒す。


「甘寧一番乗り!武器を捨てて挙手していない奴らは皆殺しにしろ!」


甘寧の部下たちは一斉に城壁の制圧を始める。


「まずい!あの赤服の者達を止めろ!」


必死で守備隊を指揮する魔族将軍の前に、恐怖の一瞬が訪れた。


「あ…あ…アリの兵が上がってきたー!」


城壁の上に現れた、アリの姿をした淩統に、魔族たちは大混乱となった。


淩統は、付近にいる兵を次々と槍で突き落としはじめ、後続で上がってきた兵たちも、同じように魔族兵を城下へ叩き落す。


「わ、わかった!降伏するからもう殺さないでくれ!」


魔族将軍は懇願するように、武器を捨てて拱手した。


淩統たちはそのまま城内になだれ込み、その日のうちに丹陽は陥落した。


「よう淩統!お疲れ!酒を持ってきたぞ!」


「やあ興覇!貴方が率いる『錦帆隊』のお陰で、無事に攻略できました」


江陵城の一件以来、二人はすっかり仲良くなっていた。


二人は城壁に腰掛けて、互いに盃を傾ける。


「建業の方も無事に奪還できたようですよ」


「そうか!これで『前世の呉』の領地は殆ど取り返したわけだ」


淩統の情報に、酒を飲みながら甘寧は喜ぶ。


「そう言えば聞いたか?魏の奴らが楚へ攻めてくるために、闘艦の生産をはじめたって話」


「私も聞いています、どうやら大群で『赤壁』から、武陵にある『郢』を狙うという話です」


「そうか、やはりこの話は本当だったのか」


「大都督(周瑜)も造船を開始したと聞いていますが、如何せん兵力差がありますからね」


「ヤレヤレ、秦軍の魔族兵を相手にしながら、魏の侵攻も食い止める、どちらか一つだけでも大変なのだがな」


「『前門の虎後門の狼』とは、正にこの事ですね」


そう話し、盃の酒を一気に飲み干す二人。


『お二方、そう心配しなくても大丈夫ですよ』


二人が話していると、陸遜が微笑みながら現れた。


「甘寧殿、私も一杯頂いて宜しいでしょうか?」


陸遜も城壁に腰掛け、甘寧からもらった盃で酒を飲み干す。


「秦・魏二国は共闘同盟を結んでいますが、あくまで我らの首都『郢』を落とす為だけのようです」

「これを見抜いた徐庶と昌王は、兵が纏まらないうちに荊州北部奪回に動くようです」


「しかし荊州北部は、秦軍の主力部隊が詰めているはずです」

「いくら個の力に差があるとはいえ、数倍の兵が守る城に攻め込むのは得策ではないと考えます」


淩統の答えに頷く二人。


「確かに、普通であれば淩統殿の考えは正しいです」

「ただ、今回は敵対していた二国が、それぞれの意図を持った共闘であり、必ずうまく行くとは言い難いものです」


ここまで話し、陸遜は二人に近寄り小声で話す。


「ここまでは全て、我々の予定通りに進んでいるのですよ」


「予定通り?どういう事ですか?」


「詳細はまだ話せませんが、秦・魏の共闘もこちらの意図通りに動いています」

「あとは、敵がこちらの賭けに乗ってくれるかどうかです」


そう話し、陸遜は二人から離れる。


「そういう事ですので、今後も心配せずに暴れてください」


話し終えた陸遜は、そのまま城壁の階段を降りはじめる。


「そうそう、大事なことを話していませんでした」

「現在宋国を攻略中の韓王からの情報で、呂布が現れたとの事です」


「呂布がですか!?」


驚く二人。


「はい、韓王軍腕利きの好漢たち4人がかりでも、全く歯が立たなかったとの事です」

「4人がかりで…ですか」


言葉を失くす淩統。


「どうやら彼は、未だ進化していない配下を探しに、あちこちの土地に出現しているようです」


「いつかこの地に来るかもしれませんので、その時は二人の力を頼りにしていますよ」


そう話し終え、陸遜は下へ降りて行った。


「おい、お前もし呂布と対峙したらどうする?」


「もし一人なら、尻尾を巻いて逃げますね」


「同感だな、あれは人の形をした化け物だからな」


二人とも、人伝手に呂布の武勇は聞き及んでいた。


「しかし兵を前にしてそんな事も出来ませんし、大変な問題が発生しましたね」


「まぁ、今いろいろと考えても仕方ないし、当面は魏の進撃に備えるとするさ」


二人はそう話して別れ、各部隊へと帰って行った。


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