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第167話 前世を超えて...

ラビット国と亜人連合国のトップ会談が始まった。


「久しぶりじゃな『神谷真実かみや・まこと』よ、息災であったか?」


「私が敬愛した神『高千穂孁たかちほ・りょう』様!」


ピットは椅子から離れて平伏し、涙を流して謝罪した。


「…神様、会いたかったです!もう一度会って貴方に謝りたかった!」

「私が油断して命を落としたばかりに、貴方様の命まで奪ってしまう事になりました」


ジャスティスはまだ知らないのだが、代理人と神は『ひとつの魂』を共有しており、代理人は神の恩恵を多く受け取れる代わりに、代理人ピットが死ぬと、同じ魂を共有するジャスティスも死ぬこととなってしまう。


肩を震わせ大泣きするピットを、帝は優しく抱きめる。


「よしよしマコト、お前は生まれ替わっても本当に泣き虫じゃな…」

「あれはお前が悪い訳ではない、わらわもその瞬間まで分からなかったのじゃから」

「それにわらわはもう復活しておるので、お前はもう何も気にすることはない!」

「だからもう涙を拭け!お前はもう自分の足で立てるじゃろ?」


帝はそっと離れ、ピットは涙を拭き立ちあがった。


「うむ、よい顔じゃ!」

「もう前の頼りない顔は、どこかに姿を消してしまった様じゃのう」


「はい、この頼りない自分を皆が支え続けてくれたおかげで、何とか半人前にはなれたと思います」


「ハハハ、お前はいつも謙遜が過ぎるのう」

「ならばその大切な仲間たちを守り抜かねばならん」

「これから大変であろうが、お前ならきっとできるじゃろうて」


帝は笑いながら席に座る。


「そうじゃ、自己紹介がまだじゃったな!」

「わらわの現世の名前は『明兎みんと』、周りからは『明帝みんてい』と呼ばれておる」


「よし、お前は特別に『ミントちゃん』と呼ぶことを許そう!」


「ハハハ、御冗談を『明兎様』…」


「…」


「…わかりました、『ミント』ちゃん」


「うむ、よい返事じゃ」

「あと、敬語もやめるように!」


「…わかりました」


「…」


「…わかった、ミントちゃん」


「うむ、だんだん良くなってきたぞ!」


「ミントちゃん、あまりからかわないで下…くれ」


ピットは冷や汗をかきながら席に座る。


「それで、お前の国は今後どうする予定なのだ?」

「わらわも詳細はまだ知らんが、今回は『日ノ本』と『宋国』の連合で攻めてくるのじゃろ?」


ミントは内裏に居つつも、ピットたちの持つ正確な情報を掴んでいた。


「はい、西郷さん達には佐幕と手を結ぶよう「3国侵攻」で話しているけど、実際は益州に『別方面』から攻撃を仕掛けるので、こちらに侵攻してくる事は出来ないと思う」


「なるほどな…まぁその事は西郷や桂も分かっていて、ピットの話に合わせてくれているのだと思うぞ?」


「えっ、そうなのですか?」


「…」


「あ、いえ、そうなの?」


「うむ、奴らもその辺の情報戦は、相当の手練れじゃからな」

「ただ、ピットの話に乗っておいた方が、佐幕派の連中を取り込みやすいと考えたのじゃろう」

「まあ、伊達に前世で『幕末三傑』などと言われておらんと言う事じゃ」


「うわぁ、それ分かっていて、この後西郷さん達に会うの、恥ずかしいな」


「ハハハ、まあお前がこの国の王になったら、いまおる3人と桂は必ず登用しておけ!」

「その他の人物は、わらわが後で教えてやる」


「ありがとう、ミントちゃん!」


ピットはミントに会えたことを、心から嬉しく思った。


「さて、あとはわらわとピットの『結婚』の話じゃな」


「えっ、本気なの?」


「当たり前じゃ!お前とわらわが結婚せねば、お前はこの国を『簒奪した者』になってしまうぞ!」


「それはわかるのだけど…」


「なんじゃ?わらわと結婚するのがそんなに嫌なのか?」


「いや、いやとかじゃなくて…」


急にしどろもどろになるピット。


「まったく、お前と言う奴は前世から本当に奥手じゃな!」

「お前さえよければ、わらわはお前の子供を何十人でも生んでやるぞ?」

「何なら100人以上でもよいぞ?」


「はわわわわ、ま、待ってください!」


はわはわし出したピットに、ミントは大爆笑する。


「ワハハハハ!お前は本当にかわいくて、からかいがいがあるやつじゃ!」

「まぁ、お前と結婚するのも悪くはないが、わらわも他にやりたいことがあるのでな」


「じゃあ、結婚はしないのですか?」


「…」


「あ、結婚はしないの?」


「いや、それは前にも話したように、この国が欲しければやらないとまずい」

「そこでじゃ!」


ミントはピットに耳打ちをする。


「え~それまずくない?」


「じゃあ他に何か手はあるのか?」


「…」


「よし、決まりじゃ!」


ミントの策に、ピットは黙って頷いた。


こうして二人の『ピットが国を乗っ取る』悪だくみは、後日決行される。


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