表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/375

第161話 新たな出会いと再会

2日後、3人は西郷の部下に連れられて、ある屋敷へと向かう。


「ここは…長州藩の藩邸じゃないか!」


屋敷の前に立ち驚く陸奥と、それを知り同じく驚くピット。


やがて門の潜り戸から、長州藩士が現れた。


「お待ちしておりました、西郷さん達も中でお待ちです」


そう話すと、長州藩士はそのまま中へ案内する。


「私の名前は『伊藤俊輔いとう・しゅんすけ』と申します、以後お見知りおきを」


そう自己紹介しながら、人懐っこい顔でピットたちに挨拶した。


広い部屋に案内されると、そこには裃を着た西郷が胡坐をかいて座り、隣に同じく裃を着た人物が、三味線を弾きながら、隣にいる女性と他の藩士らの前で唄っている。


「三千世界の鴉を殺し 主と朝寝をしてみたい」

「わしとお前は焼山葛 うらは切れても根は切れぬ」


「都々逸ですか?面白い唄ですね、『高杉』さん!」


ピットの嬉しそうな質問に、高杉は笑って答える。


「久しぶりだな、ピットさん!」

「この唄がわかるなんて、君とは話が合いそうだ!」


高杉は弾いていた三味線を女性に渡し、ピットの手を取った。


「ピットさん、君に逢えたお陰で、死ぬはずだった多くの仲間たちが死なずに済んだ!」

「その者達を代表させて、お礼を言わせてくれ!」


「説得はうまくいったのですね、よかったです!」


感謝の面持ちで話す高杉に、ピットは嬉しそうに返事をした。


高杉は振り返り、一緒にいた藩士たちに紹介する。


「このお方が『皆の命を救ってくれた』ラビット国のピット王だ!」


高杉の言葉を聞き、皆がお礼を述べる。


「ピット様、貴方が前世を思い出させてくれたおかげで、皆死なずに済みました」

「私の名前は『久坂玄瑞くさか・げんずい』、長州で藩医を務めちょります」

「一緒にいる彼は『入江九一いりえ・くいち』、私や晋作が一緒に学んだ『松下村塾』の仲間です」


久坂の紹介を受けて頭を下げた入江は、ここに居ない者たちの紹介を行う。


「先日の『池田屋騒動』にて捕縛された『吉田稔

「もしあなたが、高杉さんの前世を思い出させていなければ、私を含め、多くの仲間たちが先の未来を知ることなく、現世を去ることになっていました」


「ピット様、本当にありがとうございました」


涙ながらに頭を下げる入江達長州藩士一同。


「入江殿、久坂殿、私たちはこれから大きな仕事を成し遂げねばなりません」

「だから、あなたたちの力を前世での経験も生かして、共にこの窮地を乗り越えていきましょう」


ピットの言葉に、入江・久坂は手を取り感謝した。


その時、裃を着た一人の男が慌てて入ってくる。


「皆様、遅れてすまない!」


その顔の整った男は、ピットの前に座り自己紹介をする。


「ピット様、遅くなりました」

「私は長州藩家老を務めます『桂小五郎かつら・こごろう』と申します」


「この度はこの国の混乱に巻き込んでしまい、申し訳なく思っております」

「また、多くの仲間たちを助けて頂き、感謝の言葉もありません」


そう話し終え、すっと頭を下げる桂。


「初めまして、桂殿」

「我々も出来る限りの支援を行いますので、一日でも早くこの国を、騒乱の無い平和な国に戻しましょう!」


二人が挨拶を終えると、西郷が話始める。


「さて、皆揃いましたし、少し話をして参りますか」


「これからどこかに行くのですか?」


ピットの質問に、桂が答える。


「実はある『要人』が古都に来ておりまして、私が薩摩・長州との合同会談の準備を行っていたのです」


「ある要人?」


「はい、その方に、今ピット王が古都にいらしている事を話しましたところ、先方がどうしても会いたいと申されたのです」


「私と会いたい?一体どなたなのですか?」


「その方は、『大英海龍国』から新しく赴任された『パークス』公使です」


「『大英海龍国』ですか!」


ピットは喜んだ。


此方の方面は孔明が交渉を行っていたので、公使が会いたいという事は、孔明の交渉がうまくいっているという事と判断した。


「今から昼食を取りながらの会談となりますので、どうかピット様も一緒に同行してください」


「ありがとうございます、是非参加させて頂きます!」


こうしてピット達を含む、西郷・桂・高杉は、薩摩御用達の料亭『池田屋』へと向かった。


「ところでピットさんは、結婚はしているのかい?」


「してませんよ!結婚なんて、まだ考えもしていませんし」


ピットの風貌は20歳前後に見えるが、それは進化の為であって、実際は生まれて9カ月ほどであった。


「へぇ~じゃあ彼女とか好きな人はいないのかい?」


「いや、そういうのは全然まだです…」


「ワハハハ、そうかそうか、森の英雄もどうやらそっちの方は奥手らしいな!」


「おい晋作、ピット様に対して失礼だぞ!」


高杉らしい、ピットへの悪ふざけに怒る桂。


高杉の何気ない質問だったが、他の者は興味津々で聞く。


「そうか、ピットさんはまだ独身であったか…」

「そうか、そうか…」


西郷はその言葉を何度も繰り返した。


陸奥はそっとルクシルの顔を覗き込むが、特に何の変化もなかった。


「陸奥殿…僕の顔に何かついてるのかい?」


「いや…いつ見ても綺麗な顔だなと思って…」


その言葉を無視して歩くルクシルに、陸奥は違ったかな~と呟く。


そうこうするうちに『池田屋』へと到着する。


「西郷はん、お待ちしとりました」


女将の「トセ」がそう話し、皆を部屋へと案内する。


部屋の中では、大久保と田中新兵衛が中に座って待っていた。


「じゃあ一蔵さん、おいは入口で警備をしときます」


うむと大久保は頷き、田中新兵衛は部屋を出て、入れ替わりにピットたちが入ってきた。


「ピット様、我々も外の警護に回ります」


ピットも頷き、ルクシルと陸奥は部屋には入らずに、廊下で待機する。


「一蔵どん、『イワトモ』卿はどげんじゃった?」


西郷の質問に、大久保は笑みを浮かべながら答える。


「『イワトモ』卿は、ピット殿をこちらに引き込めたと思って大喜びじゃった」

「すぐに準備をするから、少しだけ時間をくれとの事じゃ」


「さすがは一蔵どんじゃ!」


大久保が卒なく成果を出したことを、西郷は素直に喜んだ。


「中の方、お客様がお見えになりました」


トセの言葉に返事をした、西郷の声の後に障子が開き、4人の人物が入ってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ