第109話 魔族の正体
続いて魔族に関して分かったことを孔明が報告する。
「皆さまは魔族と我々との違いは何だと思われますか?」
エルフの王たちは、あなた達も違うよ?と心の中でかるく突っ込んだ。
「おそらく魔石があるかないかでしょうか?」
アノア女王の答えにその通りと答える孔明。
「では、魔石とは何でしょうか?」
「それは魔物の魂みたいなものではないのでしょうか?」
孔明の質問に答えるセリオン王。
「はい、その認識で間違いありません」
「しかし魔石は魔法を込めたりできるものでもあります」
「つまり、魔石は入れ物と言う事ですか?」
韓信の答えに正解ですと答える孔明。
「では、魔石に入っている魂は一体誰なのでしょうか?」
ここで皆は孔明が言わんとすることに気づいた。
「魔族の体を調べましたところ、ホムンクルス(人造人間)でした」
「そして、魔石に封じられた魂は「元人間」であることも判明しております」
「つまり魔族とは、何者かが死者の魂を人造人間に入れ作り出したものなのです」
信じがたい事実を皆が突き付けられる。
「そんなこと、にわかに信じられません!」
「何か証拠があるのですか?」
エルフの王二人の質問に、孔明は一人の魔族を入室させる。
体を魔法で拘束された魔族は、孔明の質問に答えていく。
「名前は?」
「私の名前は袁術・公路です」
「魔族になった経緯は?」
「前世で皇帝になれなかった私を、四凶の一柱がこの世界で皇帝にしてくれると約束してくれたので契約しました」
「「四凶だと!」」
韓信と項羽が同時に発するが、孔明はそれを遮り質問を続ける。
「それはいつですか?」
「前世の死ぬ間際です、四凶の方から持ち掛けてきました」
「四凶の名前はわかりますか?」
「その四凶は自身を『渾沌』と言っておりました」
「まさか悪神が魔族を造っていたとは…」
ピット以外の王は驚きを隠せない。
神である俺も何も言えずにいる。
なぜなら四凶なんて名前、今初めて知ったからだ。
こんな時は何でも知っているルリエンさんに聞いてみよう。
「私もそんなに詳しくはないけど…」
「四凶っていうのは中国の悪神で、ほかに『檮杌』『饕餮』『窮奇』がいたとおもう」
「たしかどれも凶悪でろくでもない奴だったらしいから、神に追い出されて悪神になったんだって」
へぇ~そんな奴らと戦わなきゃいけないって大変だな~俺関わり合いたくないんだけど。
「何言ってんの?悪神倒すのはジャスティス君の仕事だよ?」
へ?今初めて聞いたんだけど?俺が倒すの?信者じゃなくて?
「あのさ~信者じゃ精神体の邪神とか悪魔とか倒せないでしょ?」
いや、そこは伝説の神器とか剣とかがピカーって光って悪がかき消されるみたいな?
「そんな都合のいいもんあるわけないじゃん!」
「同じ精神体のジャスティス君しか倒せないの!」
え~やだな~俺
勝てない自信しかないよ。
だって相手が神秘の力とか使ってきたら、俺うわーってやられちゃう気がするんだよね、殺戮神だしw
「大丈夫だよ、ジャスティス君なら」
「部下がこれだけチート仕様なら、きみもきっとチート仕様だと思うよ?」
なんの根拠もない大丈夫ありがとうございます、ってかあんまり俺をチーター扱いしないで!
しかたない、あとで使えそうな能力を探してみるか。
孔明の説明は続く。
「彼は私と同じく前世は『後漢』であり、とあることから王の証である玉璽を手に入れ、自らを皇帝と名乗りました」
「しかし、前世の彼はプライドが高く横暴で、他の国や領民にさえ見放されて、結果死に至りました」
「四凶と契約したのは死ぬ間際だったようで、朦朧とした意識だったために完全な契約にはならなかったようです」
ここまで孔明が話すと、袁術が変わって話し始める。
「私は今、ピット王たちのお陰で正気を取り戻すことができた」
「しかし魔族に転生してしまった以上私の寿命も長くない」
「私は現世に生まれ変わっても、後悔して生きるだけだ」
どういう事だと思う皆に、孔明が再度説明を行う。
「作られた魔族たちの体は老化が早く10年ほどしか持ちません」
「しかも造られた体から魂の入った魔石を外してしまうと死んでしまいます」
「つまり人造人間は最初から使い捨てのコマとして作られている訳です」
「魔族の存在は、四凶や悪魔などがこの世界を統治するためだけに造られた『消耗品』なのです」
「しかも人の魂を使った消耗品です」
孔明の言葉に一同沈黙する。
ピットはここで口を開く。
「いま我々がやることは、魔族を倒し悪神や悪魔の力の源である生き物たちの『恐怖心』を取り除いて力を弱める事です」
「そうすれば我々の神である『ジャスティス神』がきっと奴らを倒してくれるでしょう!」
「そうか!ピット王たちを生み出したジャスティス神であれば、造作なく倒してくれるかもしれませんな」
セリオン王の言葉にその場にいた王たちも同調する。
そして俺は納得していない。
もう俺が四凶を倒すこと前提で話が進んでいる。
ルリエンさんに四凶の姿聞いたけど何それキモって容姿だった。
それでもって4柱とも凶暴だとか…。
一応なんか役に立ちそうな能力とか見てみたけれど
『ハルマゲドン/精神力1だけ残して全信者へ渡す。驚異的な力になった信者が最終戦争を行う』
『カタストロフィ/すべての精神力を使って世界を破滅させる・自分も死ぬ』
やべっ!なんだこれ?
ハルマゲドンは今でさえぶっ壊れ性能の信者たちがさらに強くなるってことか!
でも精神力残り1になるし、状況によっては俺次の日死んじゃうかもね。
カタストロフィに至っては絶対に使っちゃだめなヤツだ。
単なる神の自爆テロで世界中の人を巻き込んでしまうスキルだなこれ。
よし、セリオン王よ!困ったときはこれですべて無にしてやるからな!
「悪神や悪魔のことはジャスティス神にお任せして、我々が今やらねばならないことは魔族の駆逐です」
「降伏するものは別として、出来る限り倒していきましょう」
「わかりましたピット殿、それで捕虜にした魔族はどう扱うおつもりですか?」
アノア女王の質問にピットは答える。
「労働力です」
「現在あちこちで道や治水の整備を行っておりますので、清正の部下に預けて作業員として働かせています」
「ちゃんと労働力として使えていますか?」
この質問にもピットはあっさり答える。
「はい、やらなければ『食糧になってもらう』と話していますので」
エルフの王は思った。
自分たちは魔族を食べる習慣などないわけだが、彼らは人間と違い他の生物から進化している為、魔物や魔族は食料の認識になっているのだろうと。
そしてその言葉が理にかなっているので、命の惜しいもの達はまじめに働くしかないのだなと。
「今は袁術殿と隷属の契約を行い、魔族兵の管理を任せています」
数にして3000程度いるので工事も捗っているようだ。
「そういえば、咸陽で捕らえた魔族将軍の4人はどうなったのじゃ?」
范増の質問にピットが答える。
「今は他の魔族兵と一緒に土木工事をやらせています」
「魔族将軍と言っても、特に有能ってわけでもなかったので、普通に人夫ですね」
「まあ、あいつ等はえばり散らすだけで何もできなかったからのう」
范増もやむなしと言った感じとは裏腹に、龍且たちはざまぁみろって感じの顔をしている。
これにて対魔族に対しての会議は終了した。