上澄みのインク【詩】
祈りの形に両手をくんで
ぐぅっと力をこめると
オレンジの果汁のような
きらきらとした雫がしたたる
きれいな見た目に惑わされてはいけない
それは哀しみの上澄みで
しぼりきったあとに残るのは
どうしようもない澱
だけどそのオレンジ色のインクで
文字を書いたならば
おひさまのような輝きに
昇華されるのかと
そうすれば
過ぎ去ったひとにも
すれ違ったひとにも
少しは顔向けができるのかと
絞りかすを食みながら
そんな甘い幻想を抱いているのです
2023年3月13日制作。