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銀の精霊

 翌日、寝不足だったから、今日は部屋に籠もろうかなって思っていると、シリイさんが部屋を訪ねて来た。

 せっかくシャルとだらだら過ごしてたのに。


「カナデさんと契約精霊に面会者が来られています」


 いつもの紺色のワンピースを着て、ドアの前に立っていたシリイさんは、いつもより、強ばった顔をしていた。


 私だけじゃなくて、シャルにも面会?


「僕に用ってあいつかな。いいよ、カナデは部屋で休んでて」


 あいつ?

 シャルは心配ないよ、と私の頭に手をおいた。

 その時、


「聖女にも用があるんだが」


 知らない人の声が響いて、転移の魔法陣が浮かび上がった。

 !

 現れたのは、銀色の髪の男性?

 驚いていると、シャルに肩を引き寄せられた。


「朝早くに無粋だよ。少し気を使ってほしいね」


「もう昼前だ。お前が逃げ回っている舞踏会の招待状を渡しに来た。陛下からも必ず聖女を連れてくるようにとの伝言だ」


 銀色の氷みたいな冷たい目がじっと私を見た。視線がゆっくり上から下へと動く。私、観察されてる?


「あんまり見ないでほしいな」


 くるりと体を回されて、私の顔はシャルの胸に埋まった。そのまま、強く抱きしめられた。


「失礼。Sランク聖女を見るのは初めてだからな。でも、まだ子供だな」


 もう19歳です。と、心の中で思いつつ、この人が誰なのか考える。品質の良い灰色のフロックコートを着ていた。とても整った顔立ち。どこにも獣耳がない。でも、人間じゃない。シャルの腕の中から出ようともがいたけど、余計に強く抱きしめられた。


「来月の人間との合同舞踏会に、聖女と一緒に出席しろとの仰せだ。陛下の命令だ。逃げるなよ」


 冷たい声でそう言って、銀色の精霊はすぐにいなくなった。


 舞踏会。舞踏会ってなんだっけ。

 踊るのかな。踊るんだよね。え、無理。絶対無理。

 それに、……人間との合同舞踏会?


「カナデは気にしなくていいよ。どうにかするから」


 安心させようと、シャルは私の頭をなでてくる。でも、陛下の命令って言ってた。必ず連れて来いって。拒否できないやつじゃない?

 ああ、もう。

 こうなったら私にできることは。


「シャル。ダンジョンに行こう」


 シャルの手を引っ張って、私は部屋に戻り、クローゼットから聖女のローブを取り出した。


「レベル上げするから。手伝って」


 今、自分にできるのはレベル上げして、強くなることぐらい。嫌な貴族精霊に会っても負けないぐらい強くなろう。昨日も、けっこう頑張って、っていうか楽勝で経験値稼いだし。その舞踏会までに鍛えておく必要あるんじゃない? だらだらしてる時間なんてないよね。


 それから6日間、シャルの協力もあって、フロアボスモンスターをいっぱい倒してレベル上げをした。


 イザベラたちと待ち合わせたのは、初めに行ったギルド。ここで、プロフィールカードの上書きができるそうだ。


「わたくしとオスカーは、かなりの数のモンスターを倒しましたわ。きっと、一番レベルが上がってますわよ」


「あたしだって、醜いモンスターを刀の錆にしてやったわ」


「私もだ。見てくれ。この戦利品の数々」


 3人とも自信ありそう。

 でも、うん。私がきっと一番。

 かなりズルい手を使ったからね。

 ギルドの買い取りカウンターに、アストロ・ダンジョン未踏の領域でとれたレアアイテムを、どっさりと積み上げたら、大騒ぎになった。


 寮の近くにあるおしゃれな内装のレストランで、サークル強化合宿の打ち上げが行われた。女子会なので、精霊は不参加。


「わたくし、レベル26になりましたわ。それから、冒険者ランクはDですわよ」


 イザベラは、ダンジョン攻略の合間に冒険者の仕事もしてたみたい。がんばったね。


「あたしは23」


「私も同じだ」


 たった一週間でこれだけ上がるのは、素晴らしい成果だそうだ。やっぱり精霊の魔力を借りられることが大きいみたい。


「カナデさんはどうでしたの?」


 聞かれるとは思ったけど、言いたくないな。

 っていうか、かなりズルしてるから。

 レベル50以上に簡単になれたよ……。

 ここは、ごまかすことにする。


「イザベラさん。お願いがあります」


 できるだけ、真剣に見えるように、手を組んで、イザベラを見上げた。


「な、なんですの? カナデさんが、わたくしに頼みなん

て。いいですわ。なんでもおっしゃい」


「私に舞踏会でのマナーとダンスを教えてください」


 レベル上げをして、どんな精霊にも負けない自信はついた。後は、きっと出席するしかない来月の舞踏会までに、私もできることをやろう。

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