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金色のため息

「はぁ」


 主君がため息をついた。


 書類から顔を上げ、黄金の瞳で窓辺を見つめ、物憂げな顔で、ため息をついた。


 !! なんと美しいのだ!!


 魔道写真を何枚も取りたくなるのを我慢して、盗み見を気づかれないように、計算に集中するふりをする。


 ああ、今日も、我が君は美しい。この美しさを永遠に保存するにはどうすればいいのか。最近は悩まし気な顔をされることが増えた。主君の悩みなど、すぐに解決して差し上げたいが、この不定愁訴の入った麗しさを目にする機会は、めったにないことだとためらってしまう。ああ、私はなんと罪深いのだろう。


 ヤマアラシ精霊伯爵マッケンジーは、シャルトリュー王子の側近にして、ファンクラブの会員でもある。黄金の王子の側で働けることを、光栄にして至高の喜びと感じていた。命ぜられれば、休みなし、給料なしでも働くだろう。側にいることがご褒美なのだ。主君こそ、わが命。主君こそ神。主君の望みなら、どんなことでもかなえてみせる。


「今頃、カナデはダンジョンにいるのかな?」


 主君は先日契約した聖女のことを、殊のほか気にかけておいでだった。


「はい。ただいまの時間は、借り物競争の最中だと思われます」


 主君のために集めた情報で、契約聖女のスケジュールも隙間なく把握してある。


「ああ、行きたかったなぁ。僕がいればあっという間にどんな敵も倒して、アイテム取り放題にしてあげられたのに」


 黄金の主君はまた、ため息をついた。


「代理に指名したロイタージュが責務を果たしておりますでしょう」


 安心させるつもりでそう発言したが、逆効果だったとすぐに気が付いた。


「ロイごときに、カナデを任せるなんて! ほんっと悔しい。なんで、今日は議会なんだよ! 一日ぐらい休んでも構わないじゃないか。それより、なんで、人の契約にいちいち侯爵ごときが文句をつけるんだよ!」


 主君は怒る姿も美しいな。金の魔力が漏れ出てきて、本当にまばゆく麗しい。ああ、いかん、興奮してきた。

 あわてて、髪の毛を撫でつける。ヤマアラシの性分か、興奮すると黒白の斑の髪の毛が逆立つのだ。主君に気づかれないようにさりげなく髪をおさえて落ち着かせる。


「それも、今日まででございます。第一王子の後宮の選定が終われば、カナデ殿が処刑死聖女ではないと公にできますので、侯爵も納得されるでしょう」


「そうだね。カナデがS級だってバレたら、あいつらに取り上げられる危険があったから黙ってたんだ。まあ、今日、クロムが後宮を作ったら、よこせとは言われなくなるだろう。勝手に攫って行く恐れはあるが」


 シャルトリュー殿下が聖女と契約したと知った侯爵たちは、汚らわしいと王家に抗議した。

 Aランク聖女は後宮に入れて、王が管理する。高位貴族のみに時々貸し与えられる存在だ。

 人間界にはBランク以下の聖女しかいない。Bランクでは高位貴族の満足する聖力を持たないため、聖女と契約するのは一般精霊だ。

 ところが、これに当てはまらないのが異世界で処刑寸前に召喚したAランク聖女だ。犯罪者を後宮に入れることはできないからと人間界に残された。ただ、豊富な聖力をもつ聖女は非常に魅力的だ。そのため、軽蔑されようが処刑死聖女と契約する貴族もいる。法律上は問題ないため、汚名を被るだけだった。しかし、王室の人間が犯罪者と契約するなどと、主君の契約を知った侯爵達が猛抗議をしてきた。


 もっとも、実際には主君の契約者はAランクではなくて、ありえないSランクだったのだ。

 さすが我が黄金の君。


 まあ、こっそりのぞき見した契約聖女は、子供のように小さくて、主君と並んだらずいぶんと目おとりするのだが。他の聖女とはかけ離れた聖力を持っているのだ。認めてやらんこともないかな。


「ああ、そろそろ議会の時間だね。行こうか、マック。さっさと終わらせてカナデに会わなきゃね」


 ほどいた金の髪を揺らして歩く主君のすぐ後ろを、荷物を持って付き従う。精霊軍の軍服が世界一似合う方にお仕えできる幸せを今日もかみしめるのだった。

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