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飛び交う噂

 貴賓室に入ると目に入ったのは、

 ヒョウ。

 ではなく、ヒョウ柄のライダージャケットに、ヒョウ柄の革のパンツを合わせた。ヒョウ尽くしの精霊。


「遅いぞ」

 と、かっこよく決めても、全身黄色のヒョウ柄である。


 脱力感を覚えながら、なんでここにと尋ねると、シャルが指定した代理がヒョウ柄精霊のロイだった。

 シャルに契約の指輪のことや精霊契約のことをいろいろアドバイスしたのもロイだそうだ。


「あの方の周りには、そんな世俗にとらわれる貴族はいらっしゃらないからな」と、どこか自慢げに言う。

 その、世俗のこととやらをお教えする代わりに、私のペット枠での第二の契約者となることを検討してもらえるらしい。今回の精霊感謝祭代理出席もそのテストらしい。って、なんでシャルが決めるの? 私の契約のことだよね。私に拒否権はないの?


 震えながらお茶を持ってきた職員さんに申し訳なかったので、当日の待ち合わせ場所を指定して、さっさと帰ってもらった。


 この件はそれでは終わらず、翌日から私の立場は、より悪くなった。


「ちょっと、あなたに精霊貴族が会いに来たのですって」


 登校した私を待ちかねたように、イザベラが絡んでくる。

 今日も紫色の髪をつやつやにうねらせている。いつものように無視は無理だった。説明しない限りずっと絡んでこられそう。


「まさか、あなたの契約精霊じゃないでしょうね」


 上ずった声で聞かれる。クラス中の視線を感じた。


「ちがう。契約精霊じゃない」


 本当のことなので、堂々と言える。


「そう、そうですわよね」


 ほっとしたようなイザベラは調子に乗り出す。


「そんな安物の支給品の指輪しか贈れない相手が、貴族であるわけないでしょうね」


 ああ、馬鹿な質問をしたわね。と私の指輪を指さして笑う。


 いや、この指輪、伝説の素材で作ってるそうですけど。神話級の装備品です。と口に出せないので、心の中で言う。全くそうは見えないのだけどね。


「でも、それなら、貴族があなたに何の用なの?」


 イザベラは顔を蒼白にした。


「まさか。あなた、貴族に何か粗相をしたんじゃないでしょうね。なんてこと。いいわ、わたくしの契約精霊にとりなしてもらうように頼んであげるわ。気を落とさないで。なんとか命だけは助かるように手を回してあげるから、3級市民として」


 イザベラの親切心のマウント発言が大声だったおかげで、学校中に、1年の劣等生が精霊貴族を怒らせたという噂が飛び交った。




 青い顔をして心配するスズさんには、本当のことを言うことにした。シャルのことはごまかして。


「じゃあ、あなたの契約精霊の知り合いなの?」


「うん」


「あなたの契約精霊が、精霊貴族に代理を頼んだの?」


「うん」


「そう……そうなのね」


 一瞬、暗い目をしたスズさんは、その後、一言もしゃべらずに手早く食事をし、用事があるからと先に教室に帰って行った。


 そして、その翌日から、ランチの席につかなくなった。


 私は、また、ひとりぼっちになった。

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