序章
しばらくぶりに復帰しました。書きたいストーリーが急に溢れ出してきたために、ここで少し自己満執筆しようと思ってます。少しでも多くの人に読んでいただけると幸いです。自己満程度ですが(笑)
地球の某所。
日本のどこかにある地下建造物。
「今日もあの子は見つからなかったね」
「そうだな。どこに居るかも見当つかぬ」
暗い部屋の中、2人の女が会話している。
「あの子が居ないと始まらないのよね…」
「うむ、見つけなくてはならない。“否定派” の彼女らに見つからぬうちに…」
ーーー別の部屋にて。
「どうやらあの子、探されてるらしいな」
「しょうがないだろ。目的は同じなんだから」
こちらでも、2人の女が会話している。
「急に妹も裏切るし、何が起きているのか…」
「それは想定外だったが、先に目指すは捕獲だろ?」
「いや、同時並行になるだろう。主に私は、な」
「ったく。本作戦に影響を及ぼすでないぞ?」
「それは問題ない。姉妹問題は後に回す。なんせ“仲裁の幹部” だからな」
ーーー…都心と田舎の狭間にある、某所。
双方の問題を解決するための組織が、極秘裏に構成されていた。
一部の者からは『反社会勢力』と蔑まれているが、実際のところ、そこまで無法ではない。
無差別に殺人を犯したり、犯罪行為をしたりする訳ではなく、裏側で警察と繋がっている組織であり、犯罪者や殺人鬼といった者達を取り締まる役割を果たしている。
しかし、ただの犯罪者ではなく、“異能乱用犯罪” に特化した、いわゆる“超能力者” を専門としている。
一般人は対象外。
そんな世界に無縁の女性が一人、平和に暮らしている。
明るい茶髪のロングヘア、アホ毛が立っている。茶色で短めの細い眉、二重まぶた。赤い瞳で、小さな口。小顔な輪郭。スカイブルーで丸ネックのノースリーブカーディガンを着ていて、白い七分丈パンツ、黒のサンダル。身長168センチ。
この女性の名は、ミファエル・ジェンプソン。
ソロで歌手をしている。
《ワァァァァー!!!!》
「みんなありがとう。またステージで会おう!」
歌い終わって舞台袖を降りると、
「…ふぅ。笑顔振りまくの疲れた…。でも仕事だし、笑顔になって全力で歌うと、全部ぶっ飛ぶから…やめらんないのよね…」
裏の顔が顕著に表れる、疲弊した顔と、深いため息。
「お疲れ様、今日も良かったな! いつも裏表が激しいけど、ホンモノだ…」
いつも支えてくれるマネージャーの男は、そう言い、小さな拍手で迎えた。
「ありがとう。でも今日のステージ長くて疲れたよ…一段とね…。人気になるにつれて増えるのは仕方ないけど、そろそろ身体保つのか心配…」
そう言うミファエルの顔は、満足そのものだった。
「まぁこの身体が壊れても、歌い続けるけど」
「身体を壊したら歌も何も無いだろう…。身体だけは気をつけるんだぞ?」
「はいはい、お節介どうも〜…着替えてくる」
心配で声を掛けたマネージャーを軽くあしらう。
「…はぁ…。…ったく。マネージャーも身体壊すような事しといて良く言うよ…特大ブーメランだし」
更衣室に来ると、フリフリのステージ衣装から、普段着に着替え始める。
「少数精鋭で活動してるから、他の大手と違って一人当たりの仕事量が多いのに…割り振りと手助けを担ってるマネージャーの方が無理してるって…」
ぶつぶつとマネージャーの文句を言いながら着替えていると、そこに、
「わっす、わっすれ、わすれすれ〜…って、お? ミファエルちゃん?」
と、忘れ物を取りに来た、1人の女性。
赤い七三分け前髪のセミロング、少し青っぽく細い眉、右の前髪はX字のクリップで留めている。紫色の瞳。黒い肩紐のインナー、上着はピンクのフリル付きオープンショルダー、赤に白黒のチェックが入ったスカート、赤いローヒールを履いている。身長159センチ。
名は、黒幡 相法。
ミファエルと同期で、親友だ。
「えっ? あ、相法ちゃん…また忘れ物?」
いつもの事だそうだ。
「“また” って言わないでよ〜♪ それより今日もお疲れ様! ボクも魅了されちゃったな〜」
と照れくさそうに言うと、忘れてしまったノートを自分のロッカーから取り出し、扉と鍵を閉める。
「相法の歌も魅力的だし、なんなら私も魅了されてたから、お互い様…かな」
こちらも少し照れくさそうに、しかし照れ隠しをしながら冷静そうに言う。
「ならよかった〜! 次も期待してるよっ! じゃあね♪」
そう言って、相法は更衣室を去る。
「…」
その去る相法を見て、ミファエルは、
「…ふぅん…? …やっぱ、そっちの方が退屈しないかもね……」
と、意味ありげに呟いてから、ロッカーの扉と鍵を閉じ、そして更衣室を出た。
「お待たせ、マネージャー」
「長かったな? …そういや、相法ちゃんがさっき通って、これを渡してほしいって…」
どうやら相法は一度、ミファエルの楽屋に手紙を届けてから更衣室に来たようだ。
「ここに寄ってたんだ? えっと…?」
その手紙の内容は、理解しがたい物だった。
『ミファエルは今、狙われてる。でも安心して? ボク達が必ず守る! 裏には繋がせないから、守らせて?』
「…は? 何これ、意味分からない」
そう言いながら、手紙を見つめて、机にヒジをつき、考え込む。
(狙われてる…ってのは、暗殺か、もしくはAVか? “裏” って言ってるし、その線は濃厚かもね? んで“ボク達” って事は、グループ…? …う〜ん…あり得ないとは思うけど、裏社会に通じてる…?)
そう考え込んだ後、手紙と別にメッセージがスマホに届く。
《ピロンッ♪》
「ん?」
そのメッセージは、お出かけの誘いだった。
『詳しく話すから、ウチに来て。明日の12時、ボクの手料理でお昼を食べてって! ボクは絶対にミファエルを守りたいから』
「…はぁ……」
疑惑と警戒心を胸に、返事した。
『よく分からないけど、何かあって私を守りたいんだよね? 話を聞くよ。了解』
ーーーそして翌日。
二階建ての一軒家、門と家の間に花咲く庭。
「いいお家に住んでる…」
と呟き、ミファエルは、
《ピンポーン♪》
とインターホンを鳴らす。
「おっ? ミファエルちゃーん!」
と二階の窓から叫ぶ相法。
「来たよ〜」
とミファエルが言った直後、信じがたい光景を目の当たりにする。
「ほっ!」
と息を整え、窓から飛び降り、
「よっ!」
と、門の前に着地した。
「相法…身体能力高いってずっと思ってたけど、そこまでいくと忍者みたいだね?」
と何の気なしに聞くと、
「まぁそれに近いし…その辺の話も含めて、話そうと思ってね」
と、どうやら身の上話をする様子だ。
「ふぅん?」
と少し興味なさげに反応するが、
「秘密を知れる機会…とでも思えばいい?」
実際は、少し微笑みながら楽しみにしている。
「まぁそんな感じ。キミの事も含めてね?」
ウィンクしてそう言う相法。
「私の…?」
ミファエルは理解できないまま、
「…お邪魔します」
と、相法の家へ入る。
部屋に着くと、相法は部屋の鍵を閉める。
「ちょ、なんで鍵? そんな深刻な話…??」
少し慌てるミファエルに、
「深刻だから…あえて防音室にした」
少し煽りをかけるように、静かに話す。
「実は…ボクは“超能力者” で、“闇派閥” って呼ばれる裏社会の組織に居るの。“深獄” っていうんだけど、ボクは、その副隊長! 隊長の“ヴァリエル” とボクは、闇派閥の総長に、キミを守る任務を与えられているんだ」
どうやらミファエルには何か隠されている様子。それを守るために、相法たち“闇派閥” は活動しているのだとか。
「…超能力者が、どうしてただの歌手の私を?」
とミファエルが率直な疑問をぶつけると、
「同じ裏社会にある“万極” から聞いたんだけど…あっ、万極は仲間だからいいんだけどね? “陽質” と “陰鎧” が、キミを狙って動いてるって情報があったんだって! だから、その略奪者から守るのがボク達の役目!」
と真相を話す。
すると、突然…
《ブォン…》
と、防音室に誰かが侵入してきた。
「悪いな、相法さん。おおかた“宝石” の見当は付いていたのだが、まさか貴女の側近であるとは…」
と、風を纏いながら話す。
茶色のロングヘア、黒く細長い眉、黄土色の瞳。口の左下にホクロがある。首かけ紐の黒いインナーに黄色のオープンショルダーを着ながら、白いパーカーを羽織っている。濃い水色の七分丈パンツに、青白いサンダルを履いている。
その女性の名は、エニア・ヴァイデンバール。
「エニア…! 渡さないよ、ミファエルは!!」
と守護態勢に入るも、
「いえ、連れ去るつもりは無いのである。探していたのは事実とはいえ…」
エニアは、どうやら目的が違うようだ。
「…? どういうことなの?」
と相法が聞き返すと、
「私たち“陽質” は、ミファエルさんを探すと同時に、守ろうとしていただけの事。…」
そこまで言うと、少し考え込み、
「…そのために、我々と共に行動してもらおうと思ったまで」
と言い放つ。
「やっぱ連れてこうとしてない?」
相法は疑惑の視線を向ける。
「…“未遂防衛” のために必要となるが故に、共に行動しようと誘っているまでだ…」
その言葉を聞いた時、相法の様子が変わり、
「へぇ…? …正義ヅラしておいて、実際は殺人鬼に成り下がろうって魂胆かなぁ?」
と、凄まじく病んだ目になった途端、まとう雰囲気が変わり、能力が暴れ始める。
「相法さん…そんなつもりは無いですよ? ミファエルさんの能力を“利用させてもらう” だけであります」
と言った直後、エニアは風を腕に纏う。
相法は、オーラを纏いながら動く。
その様子を見て、
「暴力反対…」
とミファエルが呟いた時、異変が起きた。
突如として、2人の能力がフッ…と止まった。
「っ!?」
「な、ん…!?」
エニアと相法が立ち止まる。
「…えっ?」
状況の一切を理解できていないミファエル。
しかし……
「…ミファエル!!」
相法はミファエルの手を掴み、そして防音室から姿を消した。
「…しかたない。戻るのが良かろうな、今日は」
ミファエルの連行を諦め、姿を消す。
………某公園。
「なんとか撒いたね…エニアを」
と安心して、公園のベンチに座る相法を、
「うん…。…ところでさ?」
隣に座り、唐突に相法を見つめるミファエル。
「!? な、なに??」
少し照れながら、同じく見つめ返す。
「私に、どんな能力が眠ってるの?」
「簡単に言えば、“逆算” かな?
“空間内の超能力者に干渉して、その能力を操作する”
能力が眠っているんだよ♪ 今はまだ、止めるだけなんだけどね?」
…これは、ミファエルと、ミファエルを奪いに来る人々から護衛する、黒幡 相法のお話。