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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

11月29日の夢

作者: 時雨

俺は人を殺した。

どうやってか、こいつが誰なのかも分からない。

気付いたときには倒れていて、でもまだ人の温もりと重さが残っている。

俺は弟を呼んだ。正確には弟に見つかった。

弟は俺を受け入れた。

警察に行こう、や、親に言おうも無かった。

ただ、埋めるのは良くないと言った。

じゃあどうするのかと。布に包んで、家の裏手にある、もう使わない玩具の鉄棒に括り付ける。

裏手へ回ったとき、何時もは姿を見せない隣人が友人たちと酒を飲んでいた。死体は後ろをついてくる弟が持ったから見つかる事は無かった。何故こうもタイミングが悪い。仕方がないので鉄棒を移動させて括り付けた。

家へ入ると、正月だった。

親戚が集まるこの家では、見つかる可能性が高くなる。が、既に人が集まっていて、あろう事か宴会も始めていた。俺はそんなに長く外に居ただろうか。はたまた弟と二人で抜けていた事に違和感を覚えられなかっただろうか。

盛り上がる宴会を他所に俺は検索をかける。「人を殺した時の対処法」「死体処理」「殺人 懲役」

そうして調べていく内に、人は死んだら腐るんだと思い出す。記事の一つには、”埋めたらその場所の土だけ異様に良いから植物が育ってしまい、かえって注目される”と書いてあった。弟の言うとおり埋めなくて良かった。

そう言えば昔読んだ推理小説で、人を(ろう)状にして腐るのを防いだという話があった。そうして処理した死体は火を付ければ跡形もなく消える。しかし、まぁその方法には時間がかかるしやり方も分からない。

と言うか、布に包んで括り付けただけでは直ぐに腐る。もう臭いでバレているのでは無いか。特殊清掃の漫画で、3日以内ならまだ人の形が有ると書いてあった。3日過ぎてブヨブヨになったら鉄棒から落ちてしまう。そもそも虫が集まっていたら3日以内でもバレる。

直ぐに確認したくなった。

まだ腐っていないか、人は近くに居ないか確かめる必要が有る。

外に出ようとすると、母親に呼び止められた。何かを察しているのか酷く心配してくる。さっきまで俺は居なかったじゃないか。それに宴会が始まっても目もくれないで、タイミング悪く心配するくらいなら放っておいてくれ。

俺と会話をしながら母親はインターホンを見る。すると、画面に映る雲が猫みたいだと言った。見れば確かに夕日に浮かぶ猫だった。

先程まで俺を止めていたのに、自分が外に出たくなったらしい、早く行こうと急かされる。弟が心配したのか母親と一緒に出ていく。俺は数秒してから外へ出る。

幸い辺りに人は居なかった。母親が雲を見て弟と会話している内に裏手へ回る。虫は集まっていない。布を少しめくってみると、更に布が出てきた。更にめくると、死体はしっかりとビニールに包まれていた。包んだのは俺じゃないから、弟がやったのだろう。俺は酷く安心した。

表へ戻ると、何をやっていたんだと問われた。それにも適当な言い訳を重ね、何とか家へ戻る。

こんなに疲弊するなら殺さなければ良かったと、今更後悔が押し寄せる。

もう警察に出頭してしまった方が良いのか。

俺の悪い所が出ている。見つからなければいい、警察でも誤魔化せばいい。最善策は分かっているのにやらない。冒険は出来ない。

物事を軽く考えるからこうなるんだ。しかし、警察に捕まってもどうにかなると思っている自分がいる。自由はなくなるが、死刑までは生かされる。其処で暮らしていればそれが全てになる。急に怖くなくなった。しかしどちらにせよ自首する気はなかった。

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